izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

2018-02-25から1日間の記事一覧

狩人と、白銀の鹿6(最終章)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇「私の愛が、どういうものか、もう一度あなたに教えてあげます」白銀の鹿がそう言うと、ざわついていた周りの音が遠のきました。 狩人は、完全に鹿と二人になったのです。もう犬の吠声も、銃声も聞こえません。「この銀色の雪のカケラを見てくだ…

狩人と、白銀の鹿5

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ キラキラこぼれる朝光の森の雪道を、狩人は急ぎ歩いておりました。 彼には周りの清々しい空気も、滴る美しい雫も目にとまりません。 ただ一つだけを見ているのです。それはあの鹿のことでした。彼はつぶやきながら考えました。「村の連中がやって…

狩人と、白銀の鹿4

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ その日も森は光に覆われておりました。まるで春のようなのです。太陽は雪をしっとりとさせ杉の枝先からはポタポタ雫が落ちています。風が吹くと、光は白くキラキラ舞い散ります。ツピツピ・・・ツピツピ・・・気の早い鳥が歌っています。 * 狩人…

狩人と、白銀の鹿3

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 狩人はぼんやりした目で鹿を見ました。彼には鹿の言った意味がまるでわからなかったからなのです。たくさんの星がチラチラ揺れます。その上雪もかすかに降ってきました。 フワフワ・・・フワフワ・・・雪は途切れず舞い降りました。森は時折ピシ…

狩人と、白銀の鹿2

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇「ほら、こっちです。私を見て!」 はっきりとした声がしました。けれど雪に閉じ込められた狩人の体は動きません。まぶたを開くことさえできないのです。すると声が再びしました。さっきよりもさらにはっきりと、 「さあ、目をあけて、私を見て!」…

狩人と、白銀の鹿1

雪と、森と、精霊。そして人間の物語。 真冬の雪の日にどうぞ。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 泉ウタマロワールド 【狩人と、白銀の鹿】 その狩人は雪深い森を抜け、山の斜面を歩いていました。 冷気の中を太陽の光が踊り、雪晴れの世界は笑っています。真冬にしてはずいぶん…