ある月夜の晩でした。
木の洞穴から幼いフクロウが顔を出します。
月明かりは煌々(こうこう)として、
明るい夜の森でした。
*
近くの高い枝の上から、
母フクロウがわが子を呼びます。
「ホウホウホウ・・・
何してるんだね。早く飛んでこっちへおいで。
ホウホウホウ・・・」
すると小さなフクロウは震える声で答えます。
「クウクウ・・・クウクウ・・・
だって、だって、飛べるかどうかわかんない・・・」
すると母フクロウは優しく鳴きます。
「ホウ・・・ホホウ・・・。
まず手を放してごらん。
飛べるも、飛べないも、
しがみついてたらどうにもならない・・・。
ホウ・・・ホホウ・・」
それでも小さなフクロウは、
穴の縁を握ったままで言いました。
「クウ・・ククウ・・・。
だって、だって飛べるかどうか、わかんないのに、
手なんか絶対離せない・・・」
*
ホウ・・・ホホウ・・」
それでも小さなフクロウは、
穴の縁を握ったままで言いました。
「クウ・・ククウ・・・。
だって、だって飛べるかどうか、わかんないのに、
手なんか絶対離せない・・・」
*
その晩とうとうフクロウは、飛ばずに巣穴へ入りました。
その翌日も、その次も。
幼いフクロウは飛べません。
月は細くなり、闇夜の晩がやって来ました。
満天の星が世界を包んで歌います。
歌は途切れず、
とても優しく・・・大きく・・・小さく・・・
小さく・・・大きく・・・舞い降りました。
小さく・・・大きく・・・舞い降りました。
母フクロウは、コックリコックリ居眠りでした。
いつまでたっても飛ばないわが子に、
少々疲れていたのです。
幼いガンコなフクロウは、
蔦(つた)のツルをしっかり掴み、
幼いガンコなフクロウは、
蔦(つた)のツルをしっかり掴み、
落ちないようにしておりました。
そして小さくつぶやきました。
「あたし、一生このままかしら。
それは嫌だわ・・・。
私にだって羽があるのに、一度も森を飛ばないなんて」
かすかに夜風が吹きました。
そして小さくつぶやきました。
「あたし、一生このままかしら。
それは嫌だわ・・・。
私にだって羽があるのに、一度も森を飛ばないなんて」
かすかに夜風が吹きました。
チ・・・チ・・・チチ・・・。
チ・・・チ・・・チチ・・・。
どこかで虫が鳴きました。
*
小さなフクロウは思います。
≪そう言えばあたし・・・
飛べないことだけ考えてたわ。
地面に落ちたらどうなるの?って・・・≫
地面に落ちたらどうなるの?って・・・≫
==星はかすかに歌っています==
≪そう言えばあたし・・・≫
フクロウは続けて思います。
≪森の中を、すう―――――――っと、
澄んだ空を、すう――――――っと、
夕暮れを、すう―――――――っと、
飛んでる自分、想ったことない・・・≫
小さなフクロウは森の匂いを嗅ぎました。
夜露に濡れた、草の匂いも嗅ぎました。
≪ああ・・・いい香り・・・≫
フクロウは思います。
≪夜・・・森・・・香り・・・私これ、全部好き・・・≫
幼いフクロウは目を閉じました。
==星は息をひそめています==
≪夜・・・森・・・香り・・・とても好きだわ・・・≫
その時、小さなフクロウは、
気づかぬうちに握っていた手を放していました。
母鳥は、ハッと目覚めてあたりを見ます。
*
母鳥は、ハッと目覚めてあたりを見ます。
*
わが子はそこにいませんでした。
幼い小さなフクロウは、
夜明けの森を、自由に軽く飛んでいました。
*
*
東の空を、流星が一つ、通りました。
*
*
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