izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

小さなふくろう

 

 

 


ある月夜の晩でした。
木の洞穴から幼いフクロウが顔を出します。




月明かりは煌々(こうこう)として、
明るい夜の森でした。

 

 

 

 

 

 

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近くの高い枝の上から、
母フクロウがわが子を呼びます。





「ホウホウホウ・・・
何してるんだね。早く飛んでこっちへおいで。
ホウホウホウ・・・」
 


すると小さなフクロウは震える声で答えます。



「クウクウ・・・クウクウ・・・
だって、だって、飛べるかどうかわかんない・・・」




すると母フクロウは優しく鳴きます。
 


「ホウ・・・ホホウ・・・。
まず手を放してごらん。

飛べるも、飛べないも、
しがみついてたらどうにもならない・・・。
ホウ・・・ホホウ・・」





それでも小さなフクロウは、
穴の縁を握ったままで言いました。




「クウ・・ククウ・・・。
だって、だって飛べるかどうか、わかんないのに、
手なんか絶対離せない・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

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その晩とうとうフクロウは、飛ばずに巣穴へ入りました。




その翌日も、その次も。
幼いフクロウは飛べません。




月は細くなり、闇夜の晩がやって来ました。
満天の星が世界を包んで歌います。




歌は途切れず、
とても優しく・・・大きく・・・小さく・・・
小さく・・・大きく・・・舞い降りました。
 
 
 
 
 
 
 
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母フクロウは、コックリコックリ居眠りでした。
いつまでたっても飛ばないわが子に、
少々疲れていたのです。





幼いガンコなフクロウは、
蔦(つた)のツルをしっかり掴み、
落ちないようにしておりました。




そして小さくつぶやきました。



「あたし、一生このままかしら。
それは嫌だわ・・・。
私にだって羽があるのに、一度も森を飛ばないなんて」




かすかに夜風が吹きました。
 


チ・・・チ・・・チチ・・・。
チ・・・チ・・・チチ・・・。
 
 

どこかで虫が鳴きました。


 


小さなフクロウは思います。


≪そう言えばあたし・・・
飛べないことだけ考えてたわ。
地面に落ちたらどうなるの?って・・・≫
 
 
 


==星はかすかに歌っています==




≪そう言えばあたし・・・≫
フクロウは続けて思います。
 
 


≪森の中を、すう―――――――っと、
 澄んだ空を、すう――――――っと、
 夕暮れを、すう―――――――っと、

飛んでる自分、想ったことない・・・≫
 
 
 
 
 
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小さなフクロウは森の匂いを嗅ぎました。
夜露に濡れた、草の匂いも嗅ぎました。





≪ああ・・・いい香り・・・≫
フクロウは思います。


≪夜・・・森・・・香り・・・私これ、全部好き・・・≫
幼いフクロウは目を閉じました。
 
 
 


==星は息をひそめています==





≪夜・・・森・・・香り・・・とても好きだわ・・・≫




その時、小さなフクロウは、
気づかぬうちに握っていた手を放していました。

母鳥は、ハッと目覚めてあたりを見ます。




 



わが子はそこにいませんでした。
 
 
 
 


幼い小さなフクロウは、
夜明けの森を、自由に軽く飛んでいました。




 
 



東の空を、流星が一つ、通りました。
 
 
 
 
 
 
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                *

           。








 

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