izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

笛吹き男と、カンコドリ(閑古鳥)

 

 
 
 

皆様こんにちわ~。

( ̄∇ ̄+)

今日の物語は宇宙銀行や宇宙循環という

ワードは出していませんが、

その意味が込められているストーリーです。

 

 

お友達が増えたので再投稿。

 

 

 

 

 

 

 

 

自らの敷居を上げることで、

才能と価値を閉じ込めている

少々残念な男の短い物語をお届けします。

 

 

 

 

 

ハッピーエンドではなく、

シニカルストーリー。

( ̄Д ̄;;

 

 

 

 

シュールなウタマロワールドご堪能くださいね〜。

( ̄∇ ̄+)

挿画も全て自作です。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 【笛吹き男と、カンコドリ(閑古鳥)】

 

 

 

 

 

 

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まだ春遠い晴れた日のことでした。

ある旅人が、村はずれの野道を歩いていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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しばらく行くと、

小さな木の家がポツンとあります。

 

その軒下には、カゴに入った鳥がいました。

色鮮やかな、大きくて珍しい鳥でした。

 

 

 

 


カンコ! カンコーー!!」

鳥は甲高い声で鳴きました。

 

 

 

 

 

 

 

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「おや?これはオウムだろうか?

それとも九官鳥?」

旅人は足をとめ、その鳥をしげしげ見ました。

 

 

 

 

 

 

カンコ!カンコーー!!」

鳥は首を伸ばして鳴いています。

 

 

 

 

軒下には看板がありました。

 

 

 

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「笛吹き師・・・?」

旅人がそうつぶやくと・・・。

 

 

 

 

 

「ギイッ・・・」

 

 

 

 

小さな木戸の窓が、10センチほど開きました。

暗い家の中から無愛想な顔の男が

じっと旅人を見つめます。

 

 

 

 

 

 

 

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旅人は少々驚きつつも、

「こんにちわ。珍しい鳥ですね、

なんという鳥ですか?」

と訊きました。

 

 

 

 

 

 

カンコドリです」

男がそっけなく答えました。

 

 

 

 

 

 

「そ・・・そうですか。

初めて見ました」

 

 

 

 

 

「私は天才笛吹き師です」

男は訊かれてもいないのに言いました。

 

 

 

 

 

 

「私の笛の音は

細胞レベルで深いヒーリングを起こします」

 

 

 

 

 

「そ・・・そうですか」

旅人はめんくらって相槌をうちました。

 

 

 

 

 

 

「私の笛の音はDNAを活性化し、

真の本質を強化し、

深い浄化を促します。

こちらがメニュー表です」

 

 

 

 

 

男は窓越しに一枚の紙を差し出しました。

 

 

 

 

 

***

 

 

あなたのための自分軸に戻す音色

金貨10枚。

 

 

あなたの魂を清める音色

金貨15枚。

 

 

 

あなたの具現化力を発動させる音色

金貨20枚。

 

 

 

****

 

 

 

 

 

旅人は驚いてそれを落としそうになりました。

金貨1枚でも大金だったからなのです。

こんな料金表は見たことがありませんでした。

 

 

 

 

 

 

旅人は少々困って言いました。

 

「私は今、村を通り抜けてきました。

村でも演奏するのでしょうね?」

 

 

 

 

 

「招致があれば出かけます。

その際には出張費、場所代が加算されます」

 

 

 

 

 

「そ・・・そうですか」

 

 

 

 

 

 

「ただし、この自宅スタジオでの演奏の場合は、

場所代等はかかりません。

完全遮断した完璧なスタジオです」

 

 

 

 

 

 

旅人はその家をあらためて見ました。

小窓が一つあるだけで、

出入り口すら見当たりません。

 

 

 

 

 

 

 

「私の音色はお代を頂いた方にのみ、

お伝えできます。

 

わずかでも外へはもらしません。

音色はエネルギー。

エネルギーは価格そのものに値します」

 

 

 

 

 

 

 

カンコ!カンコー!!

 

 

 

 

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カンコドリがせわしなく鳴くと、

奇妙な空気が流れました。

 

 

 

 

 

旅人は話題を変えようと思いました。

 

 

 

 

 

「実は私は詩人です。

詩と笛は相性がいい気がします」

 

 

 

 

 

 

「共同での体験の場合・・・」

男はニコリともせず言いました。

 

 

 

 

 

 

「私の音色は相手の創造性を開くことができます。

私はどのような相手、

どのようなスタイルにも合わせることが可能です。

 

時間単位は5分で銀貨20枚

その後1分ごとに銀貨5枚です」

 

 

 

 

 

「カンコ!

  カンコー!!」

 

カンコドリが声の限りに鳴きました。

 

 

 

 

 

 

 

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・・・その時でした。

まるで春先のような風が吹きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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そよ風に頬を撫でられた時、

旅人は自分のことを話したくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さきほど申し上げたとおり、私は詩人です。

私は誰かに詩を語る時、

ほとんど対価をもらっていません。

 

それに対し、

愚か者扱いされた事もありました。

 

 

 

 

でも、私の仕事が無価値だからではないのです。

私が詩を朗読した時、

相手の瞳が潤みます。

 

潤んだ瞳は地上で一番美しい泉です。

 

泉は光を宿し、

その光で私は、自分が与えた以上のものを得ます」

 

 

 

 

 

 

 

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笛吹きの男は険しい表情で

無言のまま聞いていました。

 

旅人は晴れ渡った空を見上げ、

明るい声で続けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は以前、勤め人として生きていました。

でも、そのままでいたならば、生涯ずっと、

目の前の仕事をこなすだけで

すっかり終わると思ったのです。

 

 

 

 

詩人となって旅をするのは、

とても勇気がいることでした。

 

 

 

 

 

 

私は「売る」というスタイルすら持っていません。

でも・・・不思議なことに、

行く先々で誰かが泊めてくれたりします。

そして誰かから食事を頂いたりもします。

 

 

 

 

 

それは憐れみとは違います。

私は乞食ではありません。

 

 

 

 

 

とても不可解なことですが、

私が詩を伝えた人とは無関係な人々が、

喜んで私を迎えてくれます

 

 

 

 

 

 

男はするどい眼差しで旅人を見つめています。

カンコドリさえ黙っていました。

 

 

 

 

 

旅人は続けました。

 

 

 

 

 

 

「私の人生はその日暮らしの放浪です。

でもある意味それは自由です。

 

宙から降ってくる白い風のような詩を、

深く吸いこみ、

呼気するように伝えます。

 

 

 

 

地上に届きたいと望んでいる清々しい風の、

私は伝言板的な役割りなのです。

 

そしてこの役のために、

地上に生まれたスピリットだと、

自分自身を感じています。

 

 

 

 

 

 

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だからこそ私は、

詩を自らの中だけに留めておくことができません。

もしそのようなことをしたら、

宙は私を伝言者として期待することは、なくなるでしょう」

 

 

 

 

 

私は自らを、

入り口の狭い家の箱に閉じ込めることはできません。

 

高価格という箱に閉じ込めることもできません。

 

地上にある”常識”という大きな箱に閉じ込めることも、

もはやできません・・・」

 

 

 

 

 

 

詩人は微笑んで男を見ました。
 

 

 

 

 

 

 

 

「メニュー表を返してください」

男は冷ややかに言いました。

 

 

 

 

 

「あなたはお客ではない。

時間の無駄だ。さようなら」

 

 

 

 

 

旅人がメニューを返すと、

木戸はパタン!としまりました。

 

 

 

 

 

旅人である詩人は肩を落とし、

ため息をつきました。

 

 

 

 

 

そしてこう言って去りました。

 

 

 

 

 

 

「ああ、あなたがそこから出さえすれば・・・

あなたの才を通し、皆が歓びを受け取れるのに。

 

 

あなたがパッションのままに音色を開放できたなら、

宙はますます吹き込めるのに・・・

風は途切れることがないというのに・・・」

 

 

 

 

 

 

 

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=旅人が立ち去ると、

その道を通る者はいませんでした=

 

 

 

 

 

 

 

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「カンコ!カンコー!!」

「カンコ!カンコー!!」

 

 

「カンコ!カンコー!!」

「カンコ!カンコー!!」

 

 

 

 

 
 

 

 

 

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カンコドリの声だけが

空にこだまして行きました。

 

 

 

 

 

春まだ遠い、

冬の昼下がりのことでした。

 

 

 

 

 

 

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(*゚ー゚*)

 

 

 

読者のご要望にて紙本も作成し、

Amazonにございますが、

挿画があまりございません。

ご希望に合う方をお選びくださいね。

 

ではまた〜。

( ̄∇ ̄+)