この物語には1・2 がございます。
1 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11735799059.html
2 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11737096863.html
×・*・×・*・×・*・×・*・×・×・*・×
【魔法使いと小さな龍3】
月のない闇夜の晩になった時、
魔法使いは小さな龍を抱きかかえ、
自分の家に入れました。
そして家中の窓という窓に雨戸をおろし、
隙間という隙間をふさぎ、
鏡という鏡に覆いをかけました。
龍はブルブル震え、
そして家中の窓という窓に雨戸をおろし、
隙間という隙間をふさぎ、
鏡という鏡に覆いをかけました。
龍はブルブル震え、
魔法使いは濁った黄色い目つきで龍を見ました。
そして大きな鍋のある、
そして大きな鍋のある、
暖炉の前に座りました。
薄暗い家の中で、
火の精霊がチロチロ小さく燃えています。
森は寝静まり、
森は寝静まり、
風の音すら聞こえません。
魔法使いは怯えている龍を膝に載せると、
かぶせてあった羊の皮をとりました。
とたんに白い光が溢れ出し、
魔法使いは怯えている龍を膝に載せると、
かぶせてあった羊の皮をとりました。
とたんに白い光が溢れ出し、
家中すべてを満たしました。
魔法使いは目を細くして見つめています。
小さな白い龍は光の塊でありました。
魔法使いは目を細くして見つめています。
小さな白い龍は光の塊でありました。
そしてそれは、永遠と真実がそこに結実した、
奇蹟の子どもでありました。
魔法使いのシワだらけの頬に、
魔法使いのシワだらけの頬に、
わずかに赤みがさしました。
自分の膝に載っている、その小さな生きものは、
魔法でもなく、呪文でもなく、どんなまやかしでもない、
本当に天の力が生んだ、
稀有な存在だったのです。
龍は目を閉じ、
龍は目を閉じ、
体を小さく丸く縮めて、気を失うほど怯えていました。
しなやかなヒゲも震えています。
それでも龍そのものである、この世を超越した力には、なんの遜色もありません。
内面から溢れ出る清らかな美しさ、
声のない透明な歌は、
魔法使いを魅了しました。
それはどんな魔法でも、
それはどんな魔法でも、
かなわないものだったのです。
魔法使いは小さな龍が好きで、好きで、大好きでした。
魔法使いは小さな龍が好きで、好きで、大好きでした。
そしてずっとずっと自分だけの秘密の宝物でした。
彼は黒く長く汚い爪で、龍のウロコを何度も何度もなでました。
そしてうれしさのあまり、
龍に微笑みかけたりします。
けれどもそれは醜い薄ら笑いにしかなりません。
暖炉にいる火の精霊は、
けれどもそれは醜い薄ら笑いにしかなりません。
暖炉にいる火の精霊は、
チロチロ燃えてチラチラ二人を覗き見ました。
こうして夜がふけました。
◆
長い長い夜が開ける直前、
魔法使いは気を失った小さな龍に、
羊の皮をかぶせました。
そして他の羊たちを起こさぬよう、
忍び足で龍を羊小屋に戻しました。
◆
こうして7年もの月日が経ちました。
龍はずっと暮らしに馴染めず、
羊たちの笑いものでありました。