izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

魔法使いと小さな龍4

 

 

 


この物語には1~3がございます。
一篇:20~30秒程度でお読みいただけます。

 

 

 

 
 

3 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11737748719.html





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【魔法使いと小さな龍4】




    *





まだ肌寒い早春でした。
羊たちの敷地にはあちこち雪も残っています。
どこか遠くで、ツピツピ・・・鳥が鳴きます。







向こうの丘から今日も朝日が昇ります。

羊の群れはいつものように、
水を飲むため池に向かっておりました。






 
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池に着いたら、強い者順に水を飲みます。

それが羊たちのきまりでした。
これはずっと変わることのない常識だったのでありました。






羊の皮をかぶった龍はいつも一番最後です。







龍はかがんで水を飲もうと努力しました。

けれども どうにもその口は、
池から飲むのに適しておりませんでした。
 
 
 

「ああ…。
どうして僕は何もかも、
皆と同じにできないのだろう・・・」






小さな龍は悲しくなってつぶやきました。
自分の不格好な姿が池に映って揺れています。







「このまま落ちたら、僕はいなくなるのだろうか・・・」
 

ふと、そう考えた時でした。






予期なく池に落ちました。













うっかり足がすべったか、
それとも意地悪い羊の仲間が、後ろから押したのかもしれません。
 
 
 

とにかく龍は沈んで行きます。








 
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身を刺すような冷たい水が、
体の自由を奪います。

羊の皮はボッテリとして呪文のようにまとわりつきます。







ブクブク沈んで行きながら、
何をやってもだめな自分が龍の心に浮かびます。
 
 
 
 
 

「このまま死んでしまいたい・・・」
 

ふりしぼるように思いました。





けれども体はもがくのです。
口と鼻から水がゴボゴボ入って来ました。






羊の皮はずしりと重く、
龍を水底へ引きずりこみます。
池はかなりの深さです。






いじめられてきた悲しみが、
龍の心に満ちていました。
 
 
 

「このまま死んでしまいたい・・・」
 
 
 
 

体は溺れ、心は泣いておりました。







それでも手足はもがき、暴れ、抵抗しました。
けれどもどんどん沈みます。







龍にとって一番の苦しみは、
自分にとりえがないことでした。
 
 
 
 
 

「このまま死んでしまいたい・・・!」
 
 
 
 
 
龍はそれだけを思いました。







 
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徐々に体は力を失い、
意識がぼんやりとなりました。







最後の小さな泡ぶくが龍の鼻から出て行きました。
苦しさと、冷たさ、みじめさのうちに、小さな龍は池の底に横たわります。





それでも龍は死ねません。
なぜなら龍は不死なのでした。






静寂と、暗闇。
そして絶望という孤独の場所で、
全てが止まってしまいました。






 
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やがて沈黙の支配の末に、
龍でさえ知らない強い力が、
突然池の底をけりました。







龍はたちまち水面へと昇ります。
あっという間のことでした。






小さな龍は土手によじ登り、
ぜいぜい息をつきました。
体もぐったりしています。







けれどもその時だったのです。
羊の皮が脱げ落ちました。







とたんに光がはじけます!
昇ったばかりのお日様よりも、
数倍強いものでした!!






龍は水に映った自分を見ました。
そこにいたのは見たこともない者でした。







真珠色のウロコに長いヒゲ、
小さくも堂々たる、そしてなんとも神々しく美しい姿でありました。
 
 
 

閉じ込められていた輝きが、
閃光のように発しています。








 
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龍はブルリと身震いしました。
すると・・・ガラリ、
長い間かけられていた、あの魔法が落ちました。








 
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( ̄∇ ̄+)
【魔法使いと小さな龍5】