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「ほら、こっちです。私を見て!」
はっきりとした声がしました。
けれど雪に閉じ込められた狩人の体は動きません。
まぶたを開くことさえできないのです。
すると声が再びしました。
さっきよりもさらにはっきりと、
「さあ、目をあけて、私を見て!」
狩人は自分のまぶたが開いているのかどうかもわかりません。
けれどもなぜか見えたのです。
けれどもなぜか見えたのです。
雪原の中に立つ、白銀の鹿が。
鹿は真っ直ぐに彼を見つめます。
雪の重なりの中に、
小さな光がありました。
どうやら外の光のようです。
小さな光がありました。
どうやら外の光のようです。
彼は凍った指先をわすがに動かし、
次に手首を動かし、
そして肩を動かしました。
「そうです。雪は深くない」
さっきの声が届きました。
「私の目を見なさい」
雪に埋もれたまま、狩人が目を閉じると、
そして肩を動かしました。
「そうです。雪は深くない」
さっきの声が届きました。
「私の目を見なさい」
雪に埋もれたまま、狩人が目を閉じると、
再び鹿が見えました。
そして鹿に見つめられると体中に力がよみがえりました。
彼は雪の中でもがきます。
「そのキツネを離しなさい」鹿の声が届きました。
「キツネを離すのです!」
狩人は無意識にキツネをしっかりつかんでおりました。
それはとてもめずらしい、
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やがて森が濃い闇に沈む直前。
狩人は雪の中からはい出しました。
彼が雪の上に出て初めて見たもの・・・。
それは、雪の中の狩人に呼びかけた、
あの白銀の鹿でした。
星明りの下で、鹿は凛と立ち、
静かなまなざしで彼を見つめておりました。
狩人は雪の上に座り込んで思いました。
「なぜ、俺を助ける?」
彼は今までたくさんの森の生き物を、
殺して売ってきたからでした。
白銀の鹿はしばしだまって、狩人を見つめておりました。
*
白銀の鹿はしばしだまって、狩人を見つめておりました。
*
星が美しい夜でした。雪もかすかに降っております。
チラチラチラチラ・・・。
まるで星降る夜でした。
森は静かに冷えてゆきます。
どこか遠くでフクロウの鳴き声が通りました。
雪崩の中でなくしていました。
それでも彼には分厚い毛皮のコートがあります。
助かった安堵感と、
それでも彼には分厚い毛皮のコートがあります。
助かった安堵感と、
目の前にいる不思議な鹿の力で、
彼は座り込んだままでした。
白銀の鹿は微動だにせず、
彼は座り込んだままでした。
白銀の鹿は微動だにせず、
真っ直ぐ彼を見つめ続けておりました。
そして声なき声で伝えてきました。
「これは私の愛なのですよ」
そして声なき声で伝えてきました。
「これは私の愛なのですよ」
狩人は何も言えずに、
鹿を見つめ返してしまいました。