izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

狩人と、白銀の鹿3

 

 

 

 


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狩人はぼんやりした目で鹿を見ました。
彼には鹿の言った意味がまるでわからなかったからなのです。





たくさんの星がチラチラ揺れます。
その上雪もかすかに降ってきました。

 

 

 



フワフワ・・・フワフワ・・・

雪は途切れず舞い降りました。


森は時折ピシリ…ピシリ…と鳴って、

 

その静けさは天に届いておりました。
 
 
 
 
 
 
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夜が森にとけているのでしょうか、
それとも森が夜にとけているのでしょうか、
星は優しげな歌を歌っています。





狩人の胸に不思議な気持ちがひろがりました。
彼にとってこんな森を見るのは初めてでした。





「ここはどこだい?」
狩人は訊きました。




「ここは今まであなたが住んでいた世界。
そしてあなたには、見えていなかった世界です」

白銀の鹿は声なき言葉で答えます。





「これはなんだい?」
狩人は自分の気持ちについて訊きました。





「これは…私たちの愛なのですよ」
鹿は静かに伝えて来ました。
 
 
 
 
 
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星の歌は、彼に絶え間なく降り注ぎます。
狩人はそれに満たされるのを感じました。




穏やかでとても静かな、
なんとも心地よいものでした。

それなのに、その場所はいつもと変わらぬ森なのでした。





彼は真の世界に気づいたのです。
それは見たこともないものでした。
寒さも、傷の痛みさえ消えていました。




狩人はあらためて鹿を見ました。
白銀の鹿は、まるでほっそりした月のようです。





そして灰色の瞳で、彼をじっと見つめました。
その神々しさと美しさに、彼は朦朧となりました。
 
 
 
 
 
 
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***
 
 


真夜中近く、狩人は村に戻ってきました。
そして馴染みの酒場に立ち寄りました。





たいくつしのぎの男たちが、
いつものように飲んで騒いでおりました。
狩人が入って行くと、
驚いたように仲間の一人が訊きました。




「お前、どうしたんだその格好は。
ブーツも履かねぇで、銃はどうした?」




狩人はぼーっと彼らを見ました。
昨日まで自分自身も確かにそこにいたのです。
けれども今は違和感でした。





猥雑で粗暴なしゃべり、
ドギツイ色のポスター。

長年飲んできた酒の匂いでさえも、
彼は吐き気をもよおしました。




「大丈夫か?お前。早く帰って寝ろ、な!」
酔った仲間が言いました。





 
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狩人はその夜、
自分のベッドの中であの鹿のことを考えました。

華奢な白く光る足、
優しい胸もと、智恵そのもののような表情・・・。




彼は白銀の鹿をありありと思い浮かべ、
森の静けさを思い出し、
星雪舞い散る夜空を思い浮かべて眠ろうとしたのです。





けれど彼は大変なことに気がつきました。
来週、村の男たちは大がかりな猟を行うはずだったのです。





彼の胸は激しくざわめきました。
一晩中悩んだ末に、
狩人は翌朝、金属でできた罠を持って再び森へ行きました。






 
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それは動物の足をギザギザの歯で捕らえるものでした。




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