izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

狩人と、白銀の鹿4



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その日も森は光に覆われておりました。
まるで春のようなのです。





太陽は雪をしっとりとさせ
杉の枝先からはポタポタ雫が落ちています。




風が吹くと、光は白くキラキラ舞い散ります。
ツピツピ・・・ツピツピ・・・

気の早い鳥が歌っています。

 

 

 

 

 
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狩人は雪を踏みしめ、森に入っていきました。
澄みきった空気が彼をすっかり囲みます。





けれども彼の心の中は一つのことでいっぱいでした。
 
 

「あの鹿をオレのものにしなきゃならん。
村の奴らに渡すものか!」




狩人は担いできた重たい罠を、
雪と茂みに隠しました。

そして大声をあげながら、森の奥へと進みました。
「オーイ!白くて銀色の鹿ーーーー!」




高い梢からリスが驚いて覗きました。
 
 


「オーイ!白くて銀色の鹿ーーー!」
 
 
 

彼は何度も呼びながら森をあちこち探しました。
けれども鹿は現れません。




やがて春のような一日は過ぎ、
太陽も、そして細く冷たい月も、
西の峰に近づきました。





狩人はくたびれはてて、
おなかもすいてきたのです。
彼はむっつりした表情で、
とうとう家路に着きました。




森を抜け、彼がふと顔をあげた時でした。
真っ白な平原に、あの鹿が立っていたのです。

 
 
 
 
 
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凛としたたたずまい、優しげな灰色の瞳、
艶々の白銀の体。
昨日と変わらぬ美しさでした。




「こっちこ」
狩人は言いました。
 
 
 

鹿は何も言いません。
 
 
 

「こっちこ、オレが守ってやる」
彼は再び言いました。




狩人は持っていた太いロープを後ろ手に隠しました。
そしてにやけたつくり笑いをし、
ゆっくり鹿に近づきました。




鹿は真っ直ぐ彼を見ました。
狩人は鹿の周りをグルグル回って
だんだん近づいて行きました。




そして彼がロープを出そうと思った瞬間、
鹿は大きく跳躍し、狩人の頭上を越えました。




そして軽やかに雪原に降りると、
振り向いて静かな瞳で彼を見ました。

けれどもそのまま向きを変え、
走り去ってしまいました。




狩人はあっけにとられて立ちすくんだままでした。





 
 
 


翌日は吹雪でした。
その翌日も、ゴウゴウ嵐が鳴りました。
 
 
 
 
 
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けれども狩人は鹿を探しておりました。

銃も持たずに森をさまよう彼を見て、
村人は気が変になったのだと噂しました。




「どうにかして鹿を捕まえなきゃならねぇ・・・」
狩人はブツブツ繰り返し言いました。
 
 
 

「あいつらになんか渡さねぇ、
あの白銀の鹿はオレのものだ!」





彼は血眼になって毎日毎日探しました。
けれども鹿には出会えません。
こうして村人が大勢集まる、猟の前日になりました。



 
 
 

夕闇が迫り、雪は寂しげな青をたたえています。
 
 


彼は焦って考えました。

「いっくらあの鹿がすばしこくたって、
村の連中は犬を何匹も連れていやがる。
猟銃だってたくさんあるんだ。逃げおせるわけがねぇ。
その前になんとか捕まえねぇと・・・」





星がしらしら現れました。
そしていつもと変わりなく、優しい歌をこぼします。
 
 
 
 

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「しかたねぇ。やっぱりこうするしかないか・・・」
狩人は隠してあった罠を掘り出し、
大きな杉の木の下にしかけました。
 
 
 

これを踏んだ動物は、
逃げ出すことができないのです。
 
 
 

もう日の光もないというのに、
罠の歯はギラギラ光っているのでした。





 
 


翌日、太陽がやって来た時、
男たちを集めるラッパが鳴り響きました。
狩人は一人で先に、森に入っておりました。





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