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その日も森は光に覆われておりました。
まるで春のようなのです。
太陽は雪をしっとりとさせ
杉の枝先からはポタポタ雫が落ちています。
風が吹くと、光は白くキラキラ舞い散ります。
ツピツピ・・・ツピツピ・・・
気の早い鳥が歌っています。
狩人は雪を踏みしめ、森に入っていきました。
澄みきった空気が彼をすっかり囲みます。
けれども彼の心の中は一つのことでいっぱいでした。
「あの鹿をオレのものにしなきゃならん。
村の奴らに渡すものか!」
狩人は担いできた重たい罠を、
雪と茂みに隠しました。
そして大声をあげながら、森の奥へと進みました。
「オーイ!白くて銀色の鹿ーーーー!」
高い梢からリスが驚いて覗きました。
「オーイ!白くて銀色の鹿ーーー!」
彼は何度も呼びながら森をあちこち探しました。
けれども鹿は現れません。
やがて春のような一日は過ぎ、
太陽も、そして細く冷たい月も、
西の峰に近づきました。
狩人はくたびれはてて、
狩人はくたびれはてて、
おなかもすいてきたのです。
彼はむっつりした表情で、
彼はむっつりした表情で、
とうとう家路に着きました。
森を抜け、彼がふと顔をあげた時でした。
真っ白な平原に、あの鹿が立っていたのです。
森を抜け、彼がふと顔をあげた時でした。
真っ白な平原に、あの鹿が立っていたのです。
艶々の白銀の体。
昨日と変わらぬ美しさでした。
「こっちこ」
昨日と変わらぬ美しさでした。
「こっちこ」
狩人は言いました。
鹿は何も言いません。
「こっちこ、オレが守ってやる」
彼は再び言いました。
狩人は持っていた太いロープを後ろ手に隠しました。
そしてにやけたつくり笑いをし、
ゆっくり鹿に近づきました。
鹿は真っ直ぐ彼を見ました。
狩人は鹿の周りをグルグル回って
だんだん近づいて行きました。
そして彼がロープを出そうと思った瞬間、
鹿は大きく跳躍し、狩人の頭上を越えました。
そして軽やかに雪原に降りると、
振り向いて静かな瞳で彼を見ました。
けれどもそのまま向きを変え、
走り去ってしまいました。
狩人はあっけにとられて立ちすくんだままでした。
*
翌日は吹雪でした。
その翌日も、ゴウゴウ嵐が鳴りました。
銃も持たずに森をさまよう彼を見て、
村人は気が変になったのだと噂しました。
「どうにかして鹿を捕まえなきゃならねぇ・・・」
狩人はブツブツ繰り返し言いました。
「あいつらになんか渡さねぇ、
あの白銀の鹿はオレのものだ!」
彼は血眼になって毎日毎日探しました。
けれども鹿には出会えません。
こうして村人が大勢集まる、猟の前日になりました。
*
彼は血眼になって毎日毎日探しました。
けれども鹿には出会えません。
こうして村人が大勢集まる、猟の前日になりました。
*
夕闇が迫り、雪は寂しげな青をたたえています。
彼は焦って考えました。
「いっくらあの鹿がすばしこくたって、
村の連中は犬を何匹も連れていやがる。
猟銃だってたくさんあるんだ。逃げおせるわけがねぇ。
その前になんとか捕まえねぇと・・・」
星がしらしら現れました。
そしていつもと変わりなく、優しい歌をこぼします。
猟銃だってたくさんあるんだ。逃げおせるわけがねぇ。
その前になんとか捕まえねぇと・・・」
星がしらしら現れました。
そしていつもと変わりなく、優しい歌をこぼします。
大きな杉の木の下にしかけました。
これを踏んだ動物は、
逃げ出すことができないのです。
もう日の光もないというのに、
罠の歯はギラギラ光っているのでした。
*
*
翌日、太陽がやって来た時、
男たちを集めるラッパが鳴り響きました。
狩人は一人で先に、森に入っておりました。
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狩人は一人で先に、森に入っておりました。
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