izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

狩人と、白銀の鹿5




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キラキラこぼれる朝光の森の雪道を、
狩人は急ぎ歩いておりました。

 

 

 

 

 

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彼には周りの清々しい空気も、
滴る美しい雫も目にとまりません。

 
 


ただ一つだけを見ているのです。
それはあの鹿のことでした。




彼はつぶやきながら考えました。

「村の連中がやって来る前に
オレがなんとしても捕まえるんだ。


待てよ、
捕まえてオレはどうするつもりなんだ?
そうだ!
見世物にして金をとるのがいいかもしれねぇ。


そうか!
そうすればあいつを殺したりしなくてもすむ。
なんだかんだいって、あの鹿はオレの命の恩人だ。


…そうは言っても生きものなんざ、いつか死ぬ。
そしたらあの皮を剥いで売ろう。
あの真っ白な角も売るんだ。
そりゃあ法外な値がつくはずだ。


オレが世話して、オレが主人で、オレが金をとる!」
狩人はほくそえみました。




チリン。。。チリーン。。。
どこかで銀貨が鳴りました。

チャリン。。。チャリーン。。。
どこかで金貨が鳴りました。





けれども時間はあまり残っていません。
村の方からラッパの音が近づいてきます。
犬たちの血気盛んな吠え声が聞こえてきます。
 
 




太陽と風が通り抜け、
梢から雪がサラサラこぼれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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狩人はどこを探していいのかわからず、
大きな杉の木の下にやって来ました。
それは罠をしかけた場所でした。




藪の茂みを抜けた時、
彼は息をのんで立ちすくみました。
あの白銀の鹿がいたのです。




狩人はうれしくなって、思わずニタリ、笑いました。




鹿は凛と立ち、真っ直ぐ狩人を見つめています。
罠にかかった動物は、激しくもがき、唸り、
血だらけになってあえぐものです。

それなのに白銀の鹿は、静寂そのものでありました。
 
 
 

狩人は不思議に思いましたが、
「よしよし、いい子だ」
そう言ってゆっくり鹿に近づきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後ろの方で、
犬たちの吠える声が近づいています。




「いい子だからよ、おとなしくしているんだぞ…」

彼は小さくつぶやくと、ポケットから荒いロープを取り出して、
鹿のそばに寄ろうとします。




すると鹿は声なき言葉で言いました。
「それはあなたの何なのですか?」





「なんだって?!」
狩人は歩みを止め、焦りながらも、
どうにかセリフを考えました。




「おまえ・・・。
これはオレの愛なんだよ。お前を守ってやるからよ」
 
 
 

彼はつくり笑いをし、
心の中には金貨がたくさん貯まっていきます。
 


チャリンチャリーン・・・チリンチリーン・・・。
心地よい音が響きます。




そうこうしている間に犬の吠え声はかなり近くにやってきました。
ターン・タターン! 
何か獲物に発砲するのも聞こえてきました。





狩人は急いで鹿の目の前に立ちました。





すると…。
「あなたの思う愛はよくわかりました」
鹿は無言で伝えてきました。





狩人はロープを広げ、
鹿の首に巻きつけようとしゃがみました。

ところがどういうことでしょう。
白銀の鹿は罠のすぐ脇に立っているだけで、無傷なのです。
狩人の額に汗がにじみます。





ウーーーー! 
ワワワワワン!!
犬たちの息遣いさえ聞こえてきました。




「オーイ!あっちに何かいるらしいぞー!」
男たちの呼び合う声が響きます。





狩人は、鹿を力づくで捕まえるしかないと、思いました。
彼の手は汗ばみ、呼吸は浅くなり、
身震いすると、いきなり鹿に抱きつきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―――ヒラリ。
 
 
 

鹿は狩人を飛び越えました。
そして数歩離れた場所で、振り返って彼を見ました。





思わず彼は怒鳴りました。
「お前、オレのことを愛しているって言ったじゃないか!」

 

 

 

 
 
 
 
 
 
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タターーーン!
 
 
 

かなり近くの銃声です。
でもまだ見つかってはいないようです。





それでも鹿はおびえることなく、
狩人に伝えてきたのです。
 
 
 

「私の愛がどういうものか、もう一度あなたに教えてあげます」



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