izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

=伐られてしまう、愛しい桜=前編 *天竜の桜とのコンタクト:*

 

 

 信州・天竜川沿いに、大きな桜の木がありました。

 

 

 

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皆が「天竜の桜」と呼んでいました。

誰がいつ植えたのか定かではありません。

 

 

 

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でもこの木が

樹齢90歳以上だろうということは推測できます。

 

 

 

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彼はずっとここに立ち、

移りゆく季節と、

移りゆく時代を見つめてきました。

 

 

 

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日本政府が戦争を始め、人々が巻き込まれ、

 

大切な人が戦地に徴兵されたり、

大切な家族が満州(中国)へ半ば強制的に移民させられたり・・・

(1つの村から何人移民させる、というノルマがあった)

 

 

 

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その多くが戻らなかった時代。

そして残った嘆ききれない想いと後悔を桜は見つめ、

人知れず人々の心を癒しました。

 

 

 

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***

 

 1961年(昭和36年)の大型台風による

天竜川の氾濫の際には・・・

 

 

 

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サブロク災害の資料:ネットから借用しています。

 

 

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桜から徒歩数分のところにあった水神橋も崩壊寸前に。

 

 

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真ん中にあるのが当時の桜か否かは判別できませんが、

背景の山の位置から推測すると、

その近くから撮影した画像のようです。


 

 

桜はこの災害をなんとか持ちこたえました。

 

 

 *

 

 

時代は進み、私が地上に降りました。

私は幼い頃、この桜のそばの野原と川で遊びました。

彼はおじいさんのような存在でした。

 

 

やがて私が成長し、信州を離れた後も、

年に2度桜に会いに行きました。

 

  

 

 

そして、2016年。

この川沿い全ての大掛かりな工事計画が発表されました。

20メートルもの盛り土をし、

太い幹線道路を造る計画です。

 

 

 

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もちろん桜は伐られ、

穏やかな堤防沿いの農道も畑も林も梅の木も草地も、

全て埋められてしまうのです。

 

 

 

私はこの近くでキツネに出会ったことすらあります。

 

 

 

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でももう彼らもいないでしょう。

 

 

 

満月が西の山に沈む頃、川に映る美しい風景も

様変わりすることでしょう。

 

 

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私は桜の種や枝を採取し、

別の土地で再生する試みをしてみましたが、

うまく根付きませんでした。

 

 

 

***

 

 

 

そして、2018年春、

私は今年の桜が最後だと感じました。

 

 

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彼ももちろん予感していました。

大きかった枝葉は、工事業者によって縮小され、

木は本来の半分近くの大きさになっていました。

 

 

 

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その上、ひっきりなしに通る大型ダンプの騒音、排気ガス

振動でボディはダメージを受けていました。

 

 

 

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私は振動が桜の根を激しく痛めつけたと感じました。

もちろん根だけでなく、

土壌・微生物が全体が振動でダメージを受けたのでした。

 

 

 

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木は自ら枝を部分的に枯らし、体力を温存し、

最後の力を振り絞って、この花を咲かせました。

 

 

 

 

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私が花に触れた時、

彼は悲しんでいませんでした。

 

 

 

 

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花を開くことができた歓びを現し、

精一杯の輝きを放ち、誇らしげでした。

彼の意識は歓びにしかフォーカスしていませんでした。

 

 

 

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***

 

 

 

そして2018年秋、

私は彼に会えるのはこれで最後だと覚悟していました。

 

 

 

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朝靄の中、

 

 

 

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木に近づいた時、

彼は言いました。

 

 

「あなたが人間存在でいることに、負い目を感じなくていい」

 

 

 

人間が地球全体で行っている愚行を、私が悔やみ、

同じ人間でいることに

深い悲しみを持っている想いへ、

彼は言葉をかけたのです。

 

 

 

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私は

「人間存在であることの負い目」に

苦悩していた自分、

・・・にはじめて気づきました。

 

この想いは無意識下で私の精神を苦しめ

重荷になっていたのでした。

 

 

木は私に不要な想いを解消するよう

気づかせてくれたのです。

 

 

 

 

そしてこの秋、

桜の木は春よりも、さらに枝を枯らしていました。

日々の激しいダメージと、

加齢によるものでしょう。

 

工事は朝7時から17時まで。

ひっきりなしに大型ダンプが通ります。

 

 

 

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それでも脇芽が出ていました。

私はそれを持ち帰り、

国立の自宅で見守ることにしました。

 

 

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そして2日前、

この桜の近くに住む親族から、

「いよいよ伐採されてしまいそうだ」

と連絡が来ました。

 

 

 

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もちろん私にも予感はありました。

 

そして、私は彼にコンタクトし、

たくさんの感謝を伝えました。

 

 

 

すると・・・・

 

 

 

 

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長くなりましたので、

後半に続きます。

 

 

izumiutamaro.hatenablog.com

 

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