私がたくさんの落ち葉を踏んで、
雑木林のゆるい坂を上って行くと、
水源をお祭りした小さな祠(ほこら)があった。
そしてそこに
大きな松の木が立っていた。
「立っていた」と言うより
「待っていた」と言ったほうが正確だ。
*
=松の古木は私と視線が会うなり言った=
「ちこう寄れ」(笑)
=私が近づくと=
「触ってもよいぞ」(笑)
*
=松の幹は暖かかった=
「あなたは暖かい」私が言うと…
そうだ。
我々は赤い燃えたぎる血潮を持っている。
”赤松”というのがあるくらいだ。(笑)
=そして、あらためて言った=
ようこそ、
私の鼓動が聞こえるかね?
私はこの森に立ち、幸いである。
大地の上に、自身の愛しい松ぼっくりを降らせることができる。
(街中にはコンクリートで敷き詰められた地面に
立っている樹木があることを示している)
そして本来の形で立つ我々には、
果たす使命もある。
そなたは我々の声を聞く。
よって声を伝えると言う使命があるように。
***
松の葉に風が通る時、
我々はあまりの心地よさに微笑む。
霧が満ちて通り過ぎる時、
我々は地上で生きる幸せを存分に感じる。
光が射す時、
我々は強い使命と果たしている役割を誇らしく思う。
*
私の鼓動が聞こえるかね?
我々は、水、氷、霧、雲、
そして天空の星星と共に生きている。
松ぼっくりは「松の命の鼓動」であり、
一粒一粒が宇宙諸力のハーモニーで育まれている。
星星の奏でるリズムと詩を蓄えている松ぼっくりは
いわば『楽譜を運ぶ命の鼓動』だ。
我々は松ぼっくりを落とし、大地をノックする。
大地は我々の脈動する鼓動と共に歌を受け取る。
そして松ぼっくりを食べる小さなものたちは、
その星星の歌を聴き、
大地にメロディを溶かす。
大地はそれを歓んで感じとる。
やがて溶け出した歌は、空へ昇華し、雲となり、
雨となって地球全体へと降り注ぐ。
こうして我々の鼓動が運ぶ宇宙の歌は、
多層的に重なってゆく。
***
松ぼっくりに星星の詩とメロディが詰まっていることを、
人間はほとんど知らない。
だがもうすぐ知るだろう。
あなたがこれを書けば。
*
私の声はどこまでも貫いて行く。
光のように。
美しい人々よ、その言葉を聴いて。
我々と同じ感性が、
人の心にもあるのだから…。
*******
松の木とのコンタクトは以上です。
お読みくださりありがとうございました。
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この松の木はロイヤルホテル八ヶ岳の敷地内、
散策コースの水神様のそばにあります。
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翌日同じ場所を訪れると、
大きなキツネ存在に出会えました。
私がいるにも関わらず、
この水源からの小川の水を飲んでいた。
邪魔しないためにキツネ存在の画像はなし。
それではまた。
初めましての方へ、
泉ウタマロは作家ですが、
これはフィクションではなくドキュメンタリーです。