izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

物語:ヤツガシラの愛情

「ヤツガシラ」という鳥は、
夏、ヨーロッパの農場近辺で子育てをし、
冬はアフリカで過ごす渡り鳥です。

先日「Eテレ」でも紹介がありました。
その鳥の物語を書いてみます。


photo:01



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ヤツガシラは3月、
生まれ故郷のオーストリアへ向かってアルプスを越えていました。

その中の一羽に不思議なものをつけている鳥がいます。
それを見て友達のヤツガシラが言いました。

「君の背中に突き出ている小さな突起はなんだい?」
すると問われた鳥が答えます。
「これはアンテナさ。僕がどこを飛んでいるのか、
ママに知らせているんだよ」


photo:02



「君のママはそれがないと交信できないのかい?」
友達は驚いた。
「僕のママは、人間なんだ。
僕がヒナだった時、嵐が来て僕らの巣がめちゃくちゃになった。
僕を拾って育ててくれたのが、人間のおじさんなんだ」

「へええ・・・。」友達は感心します。
「人間は僕らの航路に興味があるの?」

「このアンテナは大学の研究機関が作ったものさ。
彼らは電波で僕を追っている」

「僕たちはアンテナなんかいらないのにね」
友達は笑った。
「・・・で、君のママにあたるおじさんも毎日地図を見てるのかい?」
「もちろんさ。でもママが気にしてるのはそこじゃないんだ」



photo:03



「それはなんだい?」友達が訊きます。
「ママは僕の声を聞き取ることはできないと思ってる。
本当はできるのにね。
だから僕は電波を使って・・・
”ママ、僕はここだよ。元気だよ”って伝えてるんだ。
そして、あのオーストリアの農場に到着したら、
ママには僕の帰還がいち早くわかるんだ」

「じゃあ・・・。
「君たちは心を電波でつないでいるの?」友達は訊きます。

「そうなんだ。僕たちは愛ってコードで結ばれている。
愛をやりとりしてるのさ。
ほんとは電波がなくたって、交信可能なはずなんだ。
でも今は、ママがわかりやすい方法で僕からの愛を届けているんだよ」


photo:04



友達のヤツガシラは感心しました。
「ふうん。人間ってのは不便な種族だ。
だけど、ヒナの君を助けるのは、人間でなきゃできない技だな」

「そうなんだ。愛に溢れてるけれど、どういうわけかとっても不器用。
それが人間の特徴なんだね」
二羽はクスッと笑いました。
そして別々の道をとり、故郷の空を目指して行きます。

春になるほんの少し前のうすいブルーの空でした。
ヤツガシラとママが再会できる日も、もうすぐなのです。



photo:05



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番組では、ヒナのヤツガシラがおじさんに甘えるしぐさに
胸打たれちゃいました。
(*゚ー゚*)

愛しいと感じると頬ずりしあうのは、
人間でも鳥でも同じなのですね。。
(T_T)

それにしてもデバイスなしで通信したい。
そしたらネット通信費は取られない…よね?
(⌒-⌒; )