あるところに3人の学者がおりました。
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1人目の学者は宇宙の真理について知っていました。
けれど、彼の住んでいる世界の住人たちは、
わからずやの、泣きべその、ぐうたらの、怒り虫ばかりでした。
学者は皆を諭したいと思いました。
そしてあらん限りの声で、あらん限りの努力でもって、
自分の知っている真理を説いて歩きました。
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2人目の学者も宇宙の真理を知っていました。
そして彼の住んでいる世界の住人たちも、
わからずやの、泣きべその、ぐうたらの、怒り虫ばかりでした。
学者は少しばかり彼らが気の毒に思えました。
そして誰かに問われると、
自分の知っている真理を教えてあげたのです。
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3人目の学者ももちろん宇宙の真理を知っていました。
そして彼の住んでいる世界の住人たちも、
わからずやの、泣きべその、ぐうたらの、怒り虫ばかりでした。
世界はしっちゃかめっちゃかでした。
けれどもその学者は、皆が好き勝手に生きるのを、何も言わずに眺めていました。
ただただ、微笑んでいたのです。
そう。
彼にとってこの世界は完璧でした。
そして・・・。
彼にとって、この宇宙はやはり法則どおりでありました。