その日、南の森の奥深く、鳥たちが集まっておりました。
重要な会議があったからです。
「私が思うに・・・」
ハシビロコウが深刻な口ぶりで言いました。
「事態は予想以上に危機的じゃ。この森が明日もこうして存在するのか、
誰にも保証はできはしまい・・・」
するとペリカンが言いました。
「救われる道はないのでしょうか?」
「そうじゃな・・・」
ハシビロコウはほとんど動かず答えます。
「勇気ある者が、あの遠くの森に助けを乞い、
彼らの知恵を持ち帰ったなら、
我々はここを守れるであろう・・・」
ハシビロコウは預言者でした。
目閉じたまま、答えました。
「あの遠い森ですって?」
九官鳥が驚いて訊きました。
「この大きな海の、ずっとずっとかなたじゃないの。
そこまで飛んで行ける者はいないわ」
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さあ大変です。
若者のハトはみんなの前に、押し出されてしまいました。
「すみません・・・。
僕・・・そんな勇気とてもないです」
「あるのじゃ。
わしはそなたが飛んで行くのを ”すでに見た” のじゃから」
ハシビロコウは断言しました。
「そんな・・・」
ハトの若者は動揺します。
ハシビロコウは目を開き、グッと睨んで言いました。
「我々の森を救えるのは、そなただけじゃ。
遠くまで飛べる鳥は他にもおる。
だが・・・自分自身で軌道を選べるのはそなただけじゃ!」
「では、航路を教えてください!
どこの島が休憩可能かも、教えてください!」
ハトは懇願するように言いました。
けれどもハシビロコウは目を閉じてしまい、ブツブツ言います。
「わしが見たのは、そなたが海の上をすべって飛んで行くことだけじゃ。
どこをどうやって飛んで行くのか、わしにはわからん・・・」
長い沈黙がありました。
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「でも・・・」
ハトは念を押すように訊きました。
「僕が戻って来たのが見えるんですね?」
するとハシビロコウは突然、目を ”カッ” と開き言いました。
「いいや、それは見とらん!」
「なんですって!?」
ハトは叫び、まわりの皆もざわめきました。
「わしが見たのは、ハトが真っ直ぐ飛んでいるだけ・・・」
ハシビロコウは言いました。
=鳥の会議は散会しました=
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「どうしよう・・・」
暮れ行く森の木の陰で、ハトの若者は震えていました。
「僕は夢を見てるんだ・・・悪い夢・・・きっとそうだ」
すると・・・。
「ハロ~!」
おしゃべりなコウモリがやって来ました。
「僕が目標達成の極意を教えてあげるよ~♪
大きな課題も楽々、達成さ~♪」
コウモリは、ケラケラ口調で言いました。
ハトはムッとして答えました。
「ごめん・・・今、ほっといて欲しいんだ・・・」
:::
夕暮れは濃い闇に落ち、
森は夜の鳥が鳴いています。
風の中に真夜中に咲く、甘い花の香りが混じっています。
やがて・・・。
「ホホウ・・・」
コノハズクの年寄りがやって来ました。
「ホホウ・・・。わしが知恵を授けよう。
君の才能を開く魔法のメゾットじゃよ~」
コノハズクは自信たっぷりに言いました。
「じゃあ、僕の替わりに海のかなたへ行って下さい!」
ハトの若者がそう言うと、
「エッヘン。わし、年だしな・・・」
コノハズクはそそくさと去りました。
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こうして夜はふけました。
ハトの若者は一睡もできず、悩み抜いておりました。
夜が白々と明けて来ます。
・・・その時でした。
近くの枝が、揺れました。
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