ある女の子が暗闇の中に住んでいた。
色もなく、影もない、荒野の世界。
海は押し黙り、日は登ることがなく、
いつも岩場は淫猥な影を秘めていた。
彼女はその世界が大嫌いだった。
その世界を呪っていた。
その世界から出たいと思っていた。
逃げ出したかった、終わりにしたかった。
いっそ、死んでしまいたかった。
ある時、その暗闇を切り裂き、
ヨタカが叫んだ。
「ここは鏡の国だ!ここは鏡の国!!」
ヨタカは声を枯らし、そう言って
恐ろしい闇の淵へ消えた。
彼女はつぶやいた。
「鏡の国?それはどういうこと?」
彼女は立ちすくんだ。
暗闇の中で。
そしてふと、無理して小さく微笑んだ。
すると水平線に光が射した。
かすかに光る波が見え、
風は透明な青色を運び、
鳥はその上をすべって行った。
彼女はもう少し微笑んだ。
すると太陽が現れた。
川はきらめき、魚のうろこもきらめいた。
彼女が声たて笑うと、
光の中に雨が降り、
七色の矢が天駆けた。
小鳥は彼女の肩にとまり、
小鹿は彼女をそっと覗き見た。
湿地には、花と、香りと、蝶がいた。
彼女はその世界が気に入った。
そして、
この世界の成り立ちを、
ようやっと理解した。
「鏡の国」という意味を・・・。
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完