あるところに、棚田が続く豊かな村がありました。
村人は皆、勤勉で実直でした。
ある春のこと、村に見知らぬ若者がやって来て、低い土地に住みました。
しばらくして若者が村人に尋ねました。
「あなたがたは豊かな暮らしをしているのに、なぜいつも不安げなのですか?」
すると男が答えました。
「俺たちの田んぼは、細い小川の水が頼りさ。
もしあの小川が枯れたなら、田んぼは全部干上がっちまう」
年取った男も言いました。
「水は貯えておくにゃあ限りがあるし、俺たちゃ不安で眠れねぇ」
若者はじっと考え、家の裏庭に穴を掘り始めました。
村人が見物にやって来ました。
「井戸を掘ろうと思ってね」若者は言いました。
皆は彼をバカにして笑いました。
「そんな簡単に出るわけないさ」
けれど若者は夏も秋も冬も井戸を掘り、
田んぼが忙しい時期には村人を手伝って、代わりに食糧をもらいました。
何年も若者は井戸を掘りを続け、
何年も愚か者扱いされました。
けれど…
とうとう源泉を掘り当てたのです!
若者は叫びました。
「ついに僕自身から泉が湧いたぞ!」
村人はそれを見て思いました。
「俺たちはわずかな流れを分け合うしかないと思っていた。
それはどうやら違ったようだ…。
各々が泉を掘り当てたなら、
人生も村も別世界!
なんてこった!なんてこった!」