僕が幼かった頃、僕には同じ年頃の親友がいた。
その親友は僕にしか見えない存在だったけど、僕らは家の裏庭でよく遊んだ。
庭に落ちる葉っぱや、小枝でおもちゃを作るのが一番の楽しみだった。
物置小屋は僕らの秘密基地だったんだ。
そして僕は中学生になった。
だけど親友は子どものままだった。
僕らは前ほど頻繁に遊べなくなった。
僕が受験生になった時、親友に会えない日々が続いた。
僕が就職活動を始めると、僕は彼をほとんど忘れた。
少年のままの親友は、僕を忘れられず、
けやきの木の陰から
いつも僕の後ろ姿を見つめていたらしい。
結婚し子どもが生まれた時には、僕には親友がいたことさえ、記憶から消えていた。
だけど僕は30歳頃になると、
「何か忘れてしまった大切なもの」があったような気がしてならなかった。
けれど日々の忙しさで、深く考える余裕なんかなかったんだ。
そんなある日、僕は交通事故にあった。
足を骨折し、しばらく入院した後、自宅療養を強いられた。
そして寝室のベッドからぼんやり外を眺めていた時・・・
あの親友が、けやきの木に寄りかかっているのを見つけたんだ!
僕の全身を電流が貫いて、記憶が一気によみがえった!
そして全力で庭にたどり着いた時、
親友は昔のまんまの姿と、さみしそうな笑顔で僕を見上げた。
僕は松葉杖を放り出し、親友を抱きしめて泣いた。
泣いて、泣いて、泣いた後、僕らは昔と同じように、物置小屋に入って遊んだ。
木切れでおもちゃを作って。
僕も、親友もあの時と同じ笑顔になった。
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仕事に復帰した後も、
僕は時間を作って親友と遊んだ。
するとそれ見ようと、僕の子ども、その友達や、その親がやって来た。
今や僕は木工細工の先生だ。
僕は仕事を続けながらも、その特技を磨いている。
そして僕のかたわらには、いつだってあの親友がいるんだ。
その古い友達は誰にも見えない。
でも僕にとってかけがえのない、親友なのさ。
そして僕はいつも彼に言うんだ。
「もう決して忘れないよ。絶対に!」
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あなたは・・・
あなたの中の親友を覚えていますか?
(*゚ー゚*)