izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

物語:許せない僧侶




「ああ、私は本当に他人のことだけを想って行動しただろうか?」





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その若い僧侶は夕暮れ時、森の中で考えていました。


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「今日の私の発言は、完全にあの人の為だっただろうか、
わずかでも自分の為のものではなかっただろうか?」






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いつも彼はそうやって悩んでしまうのでした。






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そこへ老師が通りかかりました。


弟子は身を低くして敬意を示します。





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老師が穏やかに言いました。
「今日もまたいつもの悩みかね?」



弟子は震える声で答えます。
「申し訳ありません。わずかばかりの我欲が残っております」




すると師は不思議そうに尋ねました。
「なぜかね?」



弟子は恐縮して答えます。
「そ・・・それは私がいまだに不完全であるからでしょう」




「なぜかね?」
老師が再び訊きました。




弟子は泣き出しそうになりながら答えます。
「そ・・・それは私が未熟者で、愚か者で、修業が足りないからでありましょう」




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それを聞いた師は言いました。
「そなたは数ある弟子の中でも一番厳しく修業しておるではないか」




弟子は悲しくなり、声を立てずに下を向いたまま涙をこぼし始めました。




すると師は続けました。
「そなたは勘違いしておるようだ」




弟子はハッとして老師を見上げました。
師は続けます。




「そこに咲いておる紫陽花を見よ。
みごとな美しいさじゃ。
だがいつかは散るであろう。
ゆえに、これは不完全かね?」



弟子は息をのんで聞いています。




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「このブナの森を見よ、今は青々と勢いがある。
じゃが冬の間はまるで枯れ木じゃ。
ブナは未熟者かね?」





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弟子は戸惑った表情です。



「あの暮れてゆく太陽を見よ、一日の半分しか働かない。太陽は愚か者かね?」




「月などはひと月に一度しか満ちた姿を見せはしない。
月は修業が必要かね?」





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老師は笑いながら去りました。




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弟子は少しの間、その言葉を考えておりましたが、涙は乾いておりました。




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夏を迎える長い黄昏時の事でした。






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(^_^)ラブ❤︎