その星「ぼーっと星」に宇宙船が到着しました。
タラップからはスーツ姿の地球人男性7名が、
一糸乱れぬ動作で降りてきます。
「はじめまして。
我々は地球星・日本国より参りました」
代表がこわばった表情であいさつします。
すると、人型の白い風船のような「ぼーっと星人」がフワフワ出迎え、綿菓子のような迎賓館に招きます。
「さっそくですが・・・」
地球星代表が言いました。
「我らの目的はただ一つ、
あなたがたの進化の秘訣を学ぶことです」
するとぼーっと星人が答えました。
「とりあえずこのジュースでも飲んでぼーっとしない?」
地球星人たちは顔色を変え口をそろえて言いました。
「そんな暇は我々にはないのです!!
一刻も早く故郷に帰還し、この星の秘密を活用せねば!!」
それを聞いたぼーっと星人は少しさみしそうに揺れました。
ホワワン ホワワン・・・。
「それは残念です。
では、あなたがたの日常生活の様子を拝見いたしましょう」
彼らは地球の映像を見はじめました。
そこでは多くの人たちが都会でせわしなく活動しています。
しばらくするとぼーっと星人は訊きました。
「ところであなたがたはいつ ”ぼーっと” するのですか?」
「ぼーっと???」地球星人7名が同時に訊きます。
「ぼーっと・・・がすべての創造の源ではありませんか。
その時間がない限り、あらゆる面からの進化を加速することは不可能ですよ」
ぼーっと星人はそう言って、迎賓館の外を指さしました。
そこにはライトグリーンの綿菓子のような公園がひろがっています。
そしてたくさんのぼーっと星人が、
好きな場所で、好きな人とぼーっとすごしていたのでありました。
「これこそが我が星の進化の源泉なのですよ」
ぼーっと星人は言いました。
地球星人たちも思わず「ぼーっと」眺めています。
しかし突如全員起立しました。
そして代表はハキハキ言います。
「なるほど感無量です!
何が地球に必要なのか、何が地球に必要でないのか。
大変勉強になりました!!」
「もうお帰りなんですか????」
ぼーっと星人が震えました。
「はい、一秒でも早く伝えるのが我々の使命ですから!!」
代表が答え、全員で宇宙船に向かいます。
一糸乱れぬ動作でした。
「それは残念だ。あなたがたは未だ理解に達していないね・・・」
そうつぶやいてぼーっと星人は揺れました。
ホワワン・・・ホワワン。。。。ホワワンワン。。。
ホワワン・・・ホワワン。。。。ホワワンワン。。。