izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

ツルの祭典:前編

あるところに、躍ることが大好きな、無邪気なツルがおりました。
大きな白い羽、しなやかな首、美しい声の持ち主でした。

のびやかなダンスはお日様の光を浴び、
冷気の中でキラキラ光をまき散らします。

そのツルの願いは、ずっと遠くの有名な谷で開かれる
『ツルの祭典』で自分のダンスを踊ることでした。


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ところがそれを聞いた、老いたツルの教師が言いました。
「お前はなにを勘違いしているんだね?
あの祭典に行くには、たくさんの段階があるんだよ」

「それはなあに?」無邪気なツルは尋ねました。

「まずは”ここで”踊ることさ。
この村で少しずつ有名になって認めてもらうのさ。
そして町に出て、認めてもらい、
隣町でも認めてもらい、そのまた隣町でも認めてもらう・・・。

そうなったら『ツルの祭典』に出ることを考えてやってもいいよ
それが昔からのやりかたなんだよ」


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無邪気なツルはがっかりしました。
彼女は今すぐにでもあの谷に飛んで行きたかったからです。

それを見て老いたツルの教師はくりかえします。

「いいかい、それが昔からのやりかたなんだよ。
だいたいお前は方向音痴、一人でなんか行けっこないよ。
その上あそこは遠いんだ。お前の華奢な体力じゃ、どう考えたってとても無理」

そう強く言って去りました。

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その晩、美しい月夜でありました。
けれどもツルはうなだれます。


なぜかって、このツルは踊ることしかできないからです。

どこに憧れの谷があるのか、どうやったらそこまで飛べるのか…。
何にも知らない世間知らずでありました。

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やがてお月様は去り、霧が晴れ、
真新しいお日様が現れようとしています。
冷えきった大気が目覚めようとしています。


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……その時でした。

西の風と南の雲がやってきました。





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物語は後編へ続きます。
( ̄▽+ ̄*)