izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

神の使いと、アシスト自転車


ある若い男が地面に座り、目を閉じておりました。
そこへ、年取った男が自転車をひいて通りかかります。


{749CAD29-67E7-430F-9436-5D85E969C0E8:01}



::::::::::::


「なにしとるんじゃね?」
年取った男が訊きました。

地面に座っている若い男は薄目を開けて答えます。
「瞑想しているんです」

年取った男は再び訊きます。
「なんのかな?」

「イメージングです。
それとアファメーション
若い彼は目を閉じたまま、ぶっきらぼうに答えました。

「ほおぉ・・・」
年取った男は感心したように首をふります。
「ところで何のためにじゃ?」

若い彼は閉眼のまま答えました。
「私が目的の地にたどり着くためにです」


{ECC37668-6538-4C8B-9340-E61DFF06923C:01}






「出発しないのかね?」
年取った男は尋ねました。

「はい、必要なのはビジョン。
そして、それを感情で十分味わいつくすことなのです」
若い彼はきっぱりと言いました。

「なるほどな・・・・」
年取った男は感心しきりでした。
「そいじゃな、この自転車を見よ」
年取った男は自慢げに言いました。

「なんですか?」
若い彼は怪訝そうに目を開きます。


「わしは "神の使い"
これは神の発明品であるアシスト自転車じゃ」


{1A251ACC-7547-4F40-8541-DF687E985503:01}





唐突な発言に、若者は不信な目つきで彼を見ました。

けれども自称 ”神の使い” は意気揚々と続けます。
「これはな、踏みだしたら助けてくれる自転車なんじゃよ」


「知ってますよ」
若い彼はつまらなそうにつぶやきました。
「それで?」


「これはな、
宇宙の力が効いた奇跡の道具じゃ」

「一歩踏みだしたら、
   アシストしてくれる乗り物なんじゃよ!」

「世界の果てまで。
望みの果てまで。
そして…今のそなたには未知の、
素晴らしい場所に行けるのじゃ!」

”神の使い”は声を大にして嬉しげに言いました。


{53D45EC8-89B5-4CBA-9AF2-D3B9E34E3CB8:01}





それでも若い彼は、ぼんやりとした表情のままでした。
「すみませんが、瞑想したいんです。
早く願望実現したいので、お引き取り願えませんか?」
そう言って目を閉じました。



****しばしの風が流れます****



「・・・・・・・・」
自称”神の使い”は溜め息をもらし、肩を落として言いました。
「やれやれ、しょーがない、他の者をあたるとするか・・・」


{2CC017D1-C28E-47F5-8E11-7006DEE576A2:01}




彼の目線には、瞑想する若者たちが点々と見えておりました。


::::::::::::::


風が砂を運び、”神の使い”は自転車を押して次の所へ行きました。

不毛の地上が続いていました。

:::::::::::::


衣がハタハタ鳴りました。


{76C8B9AE-4B58-4722-9B9E-80CB97F98D17:01}





                *

             。