ある若い男が地面に座り、目を閉じておりました。
そこへ、年取った男が自転車をひいて通りかかります。
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「なにしとるんじゃね?」
年取った男が訊きました。
地面に座っている若い男は薄目を開けて答えます。
「瞑想しているんです」
年取った男は再び訊きます。
「なんのかな?」
「イメージングです。
それとアファメーション」
若い彼は目を閉じたまま、ぶっきらぼうに答えました。
「ほおぉ・・・」
年取った男は感心したように首をふります。
「ところで何のためにじゃ?」
若い彼は閉眼のまま答えました。
「私が目的の地にたどり着くためにです」
「出発しないのかね?」
年取った男は尋ねました。
「はい、必要なのはビジョン。
そして、それを感情で十分味わいつくすことなのです」
若い彼はきっぱりと言いました。
「なるほどな・・・・」
年取った男は感心しきりでした。
「そいじゃな、この自転車を見よ」
年取った男は自慢げに言いました。
「なんですか?」
若い彼は怪訝そうに目を開きます。
「わしは "神の使い"
若い彼は目を閉じたまま、ぶっきらぼうに答えました。
「ほおぉ・・・」
年取った男は感心したように首をふります。
「ところで何のためにじゃ?」
若い彼は閉眼のまま答えました。
「私が目的の地にたどり着くためにです」
「出発しないのかね?」
年取った男は尋ねました。
「はい、必要なのはビジョン。
そして、それを感情で十分味わいつくすことなのです」
若い彼はきっぱりと言いました。
「なるほどな・・・・」
年取った男は感心しきりでした。
「そいじゃな、この自転車を見よ」
年取った男は自慢げに言いました。
「なんですか?」
若い彼は怪訝そうに目を開きます。
「わしは "神の使い"
これは神の発明品であるアシスト自転車じゃ」
唐突な発言に、若者は不信な目つきで彼を見ました。
けれども自称 ”神の使い” は意気揚々と続けます。
「これはな、踏みだしたら助けてくれる自転車なんじゃよ」
「知ってますよ」
若い彼はつまらなそうにつぶやきました。
「それで?」
「これはな、
宇宙の力が効いた奇跡の道具じゃ」
「一歩踏みだしたら、
アシストしてくれる乗り物なんじゃよ!」
「世界の果てまで。望みの果てまで。
そして…今のそなたには未知の、
素晴らしい場所に行けるのじゃ!」
”神の使い”は声を大にして嬉しげに言いました。
それでも若い彼は、ぼんやりとした表情のままでした。
「すみませんが、瞑想したいんです。
早く願望実現したいので、お引き取り願えませんか?」
そう言って目を閉じました。
****しばしの風が流れます****
「・・・・・・・・」
自称”神の使い”は溜め息をもらし、肩を落として言いました。
「やれやれ、しょーがない、他の者をあたるとするか・・・」
彼の目線には、瞑想する若者たちが点々と見えておりました。
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風が砂を運び、”神の使い”は自転車を押して次の所へ行きました。