izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

自分を知らない花。



朝露に濡れる夏の森に、一人憂鬱なものがおりました。
彼女はくよくよ考えます。



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「ああ・・・。

あの朝顔はあんなにも要領よくからまって
あんなにも天高く伸びている」





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「それと比べて私ときたら、なんてのろまな成長かしら」

彼女は棒切れのように伸びた自分の姿を見つめ、がっかりしました。






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翌朝になると、朝顔はたくさんの花を咲かせます。


朝の光を浴び、花たちは歌っているようでした。






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それを見て彼女は思いました。




「なんて豪華なたくさんの花!
それに比べて私ときたら、たった三つのつぼみだけ」







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その翌日も朝顔は色とりどりの花を咲かせました。
朝露にきらめき、どの花も甲乙ない美しさでありました。



「ああ、まるで色の合唱」






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「それに比べて私ときたら、ただの緑のつぼみだけ」







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彼女は自分が嫌でした。





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しばらくしたある日。
通り雨が去った夏の夕方、彼女自身が咲きました。






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濡れた夕暮れの青の空に、そっと姿が映ります。

それはなんとも真っ白な、大輪のユリでありました。








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彼女は思わずつぶやきました。




「ああ、なんということ。なんということ。
こんなに私、咲けたのね。
こんなに私、美しかった!」









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ユリは自分を知りました。



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森は月の出を待ち、妖艶な香りに満たされたのです。




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1991年デッサンを挿画にしております。
(*^ー^)ノ
ご堪能ありがとう❤︎