この物語には前編がございます。
(・ω・)/→魔法使いと、金の杖(前編)
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「私は知ったのです」
小さな男はか細い声で言いました。
「私が杖を振ると、枯れていた草木は立ち上がり、
ケガをしていた動物は治り、
死にかけていた鳥が飛びました。
それは私にとって信じられない力でした。
最初の一年目、私は幸福に満たされて森の中で過ごしました」
「けれど翌年、私にはそれが本当に正しいのかわからなくなりました。
あらゆる者の病を直し、あらゆる者を生き返らせることが本当に正しいことでしょうか?
私には判断つかなくなりました。
私の心は揺れました」
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「そして、三年目になると、私の心はもっともっと悩みました。
もし私の力を人が知ったら、
死を避けたい人々が私のところに来るでしょう。
そしてそれを叶えた時に・・・私はどうなってしまうのでしょうか?
皆からもてはやされ・・・その上たくさんのお金がやって来た時、
私はそれに勝てるでしょうか?
私の心は弱いのです」
男はポタポタ泣きました。
「私は誰も従わせたくありません。
私はその存在そのものが、そのものの魂の意図において、生きていて欲しいと願うのです。
私の祈りは愚かでしょうか?
どうか、聖霊よ、私の杖を取り上げ、私の力を封じて下さい・・・」
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小さな男の指先は震え、銀の杖を精霊にさし出そうとしていました。
皆、かたずをのんで見つめています。
◇◇◇◇◇
精霊はしばし黙って彼を見、やがて静かに言いました。
「安心するがよい。
祈りはあなたを導くであろう。
祈りはあなたを守るであろう。
そなたの愛の意図である“真の祈り”が揺るがぬものとなった時、
銀の杖は金色に変わり、その魔法を創るだろう。
真の祈り・・・。
それは自他を越えた強い愛の想いである。
いかなる時空、いかなる次元をも越えてゆく・・・」
精霊が黙ると、そこには静かすぎる夜がありました。
かがり火だけがパチパチ火の粉を飛ばしています。
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「金の杖に不可能はない。
だからこそ“真の祈り”に貫かれた者にしか持つことは許されない」
三人の男は目を見開いて精霊を見つめました。
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「“真の祈りに貫かれた者”それこそが最も強い魔法使い。