「ここに・・・」
精霊が言いました。
「魔法使いになりうる三人の者がいる。
その者たちに銀の杖を与えよう。
そして、まる三年後の祭りの夜、最も優れている者に金の杖を与えよう」
*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*
秋祭りの晩のことです。
かがり火の向こうに精霊が現れました。
村人たちは畏怖の念を抱いてそれを見つめておりました。
*
精霊の白く輝くエネルギーは静かに三人の男を示しました。
一人目は背の高い男でした。
二人目は太った男でした。
三人目は痩せた小さな男でした。
三人ともこの村で生まれ育った、質素な身なりの者でした。
◆+◆+◆+◆+◆+◆+◆
やがて三年後の秋祭りの晩になりました。
森の中でかがり火を囲み、村人たちが座りました。
そして銀の杖を授かった三人は、立ち上がって精霊を待っていました。
背の高い男は王様のおかかえ魔法使いになっていました。
彼はありとあらゆる名声、名誉、羨望、を得ました。
光沢のある絹で織られた衣をまとい、
そこにたくさんの勲章を付け、剣を下げておりました。
彼の鼻はますます高く見えました。
*
太った男は国の大金持ちのおかかえ魔法使いになっていました。
彼はありとあらゆる利益、繁盛、蓄財、をもたらしました。
彼は金糸で織られたマントをまとい、
首にも手首にも指にも宝石をつけていました。
彼が笑うと、太った腹が揺れました。
*
ところが・・・痩せた小さい男は相変わらずの姿でした。
ズボンの裾に泥がつき、木綿の野良着のままでした。
その表情は憂鬱でした。
◆◆◆◆◆◆◆
村人たちはやんやと喝采を浴びせました。
もちろんそれは先の二人に対してでした。
誰も小さい男に注目しません。
彼は魔法使いとして成功したように見えないのです。
◇◇◇◇◇
時が深夜に近づいた頃、とうとう精霊が現れて言いました。
「私はここにいる。
あながたのその力を見せよ!」
背の高い男が精霊の前に進み出、杖をふところから出しました。
そして・・・その時でした。
皆の上を一羽のフクロウが音もなく飛んで行ったのです。
いえ・・・。正しくは、飛んで行こうとしただけでした。
「ギューーーーーン!!」
するどい音が響きました。
「ドサリ!」
フクロウが、かがり火の横に落ちました。
わずかに動いているようですが、それは瀕死の状態でした。
「フフフ・・・」
背の高い男は鼻を鳴らして笑いました。
そして杖をふところにしまいます。
村人たちは騒然として彼を見ました。
精霊は何も言わず、白いエネルギーの姿のままでフクロウにそっと近づきました。
すると、フクロウは身ぶるいし、強く地面を蹴って飛び立ちました!
村人は言葉を失ってフクロウが森の影に消えるのを見送りました。
*
次に進み出たのは、あの太った男でした。
金銀、エメラルド、ルビー、ダイヤ・・・。
たくさんの宝石が、かがり火に反射して燦然と輝きを放ちます。
やがて彼はおもむろに杖を出すと・・・。
「バーーーーーーーーン!」
耳をつんざく音がして、モミの大木がバックリ裂けていたのでした!
村人はのけぞって驚きました。
すると精霊は何も言わずに、その裂けたモミに近づきました。
そして精霊がその場から離れた時、木は元通りになっていました。
皆がしん・・・と静まりました。
*
かがり火は夜空に高く燃え、時は真夜中を越えています。
森も村人も、息をひそめて精霊を見つめました。
◇◇◇◇◇
わずかな夜風が通った後、
精霊の白いエネルギーは三人目の小さな男の前に立ちました。
「私は知っている」
精霊はおもむろに言いました。
「あのフクロウを生きかえらせたのは、あなたの杖だ。
そしてあの裂けた大木を元に戻したのも、あなたの杖である!」