夏の夜明け前のことでした。
サトイモ畠の濡れた地面で小さなアマガエルが
懸命に跳びはねています。
「ピョン!もう一度・・・ピョン!またダメだ・・・」
彼は半べそでサトイモの葉を見上げました。
そこへ大きなヒキガエルがやってきました。
「お前さんいったい何しとるんじゃ?」
アマガエルは答えます。
「あのサトイモの葉のくぼみには、
丸い水晶があるそうです。
朝日が射したら、虹色になるそうですよ。
どうしてもそれを見たいんです」
「そりゃけっこう。で、飛び乗るコツは心得とるかね?」
のっそりとヒキガエルが尋ねました。
「ええ、そのつもりです。でも失敗続きだと、自分が愚かに思えてきます」
アマガエルは
悲しげに地面を見つめました。
するとヒキガエルはのんびり声で言いました。
「お前さん大事なことを忘れておるよ。
高く跳ぶには、深く踏みこむが肝心ってな」
アマガエルはびっくり顔になりました。
そして地面ギリギリに這いつくばると、とうとうみごとに跳躍しました。
葉っぱのはじにつかまって、なんとか飛び乗り成功です。
そしてそこにはまん丸い、透きとおった水晶がありました。
それは夜露でできたものでした。
アマガエルはうれしさのあまり言いました。
「地面にいるのはみじめだったよ。
跳べない自分に嫌気がさしてた。
でも跳べたのは自分のおかげだ」
いよいよお日様が現れました。
サトイモ畠に金の光が射しこみます。
水晶は虹色を帯びました。
アマガエルも虹色に染まりながら、
天まで登った心もちで、
たくさんの水晶をのせたサトイモ畠を見わたすことができました。
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もしかしてあなた・・・
地面でがんばる自分を けなしていたりしませんか?
もしかして・・・。
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