夏の初めのことでした。
森の奥の草むらで、
二匹のてんとう虫が背の高い草をよじ登っていました。
ツルン。小さなてんとう虫が落ちました。
ツルン。大きなてんとう虫も落ちました。
二匹は頂上まで登り、そこから高く飛ぶつもりですが、
いつも途中で落ちるのです。
「あははっ。ぶきっちょな奴らだ」
綺麗な黄色い蝶たちが、二匹を笑って通ります。
「またコケにされちゃいましたね」
小さいてんとう虫がのんびり言うと、
「チェッ!のんきに笑う場合かよ、
俺はお前にムカつくぜ!」
大きいてんとう虫はイライラして答えました。
こんな毎日が続きましたが、
それでも二匹はあきらめず、頂上目指してがんばりました。
***
そして、とうとう夏も盛りに近づきました。
ある雨の朝、大きいてんとう虫は
繰り返してきた登頂が、ほとほと嫌になりました。
そこでフキの葉の下で、雨宿りをしていました。
雨はほどなくやんで、
キラキラお日様こぼれてきます。
その時でした。
小さなてんとう虫が飛び立ったのは。
大きい方が駆け寄ると、
小さい方が降りてきました。
「いったいぜんたい、どうやったのさ!」大きい方が訊きました。
「・・・何にも」小さい方が答えます。
「俺たちあんだけ失敗して、あんだけバカにされて、
つくづく嫌気がさしたじゃないか。
何か秘訣があるんだろ!」
大きい方はムキになって詰め寄りました。
すると小さい方はぼんやり顔で答えます。
「僕たちそんなに失敗してましたっけ?
誰かにバカにされました?」
それを聞いて大きい方は驚きました。
「要するに、
お前はすべて忘れてきたのか。
悔しいこと、腹立たしいこと、何もかも。
忘れて、結局成功だ。
ああ!なんてことなんだ。
まぬけが りこうを出し抜いた!」
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どうやら人生楽しくやるには
「忘却力」もいるようです。。。
(*^ー^;)ノ
あははっ!