強烈な絵本に出会った。
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貧しい男が荒野でつぶやく。
すると荒れ野の霊が現れて、男の言葉を叶えてくれる。
荒野を開拓し、麦を播き、ムク鳥を追い払い、刈り取り・・・。
霊たちの数は増し、膨大になる。
その力は計り知れない。
ようやく麦がお金になると思った矢先、
ほんの一言が男と家族をのみこんだ。
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この絵本の著者:チュニジア生まれのナセル・ケミル氏は
霊を「悪霊」と表現している。
しかしその「悪霊」は、人の言葉に忠実だ。
彼らは良い悪いを判断せず、すべてそのまま援助するのだ。
つまり、これは物語として表された宇宙の法則。
宇宙は人の想いの良し悪しは判断しない。
「その言葉どおりに」現実を現わすのだ。
人間にとって・・・
結果が悪ければ「悪霊」となり、
良ければ「精霊」となるのだろう。
私たちは安易に言葉を使いすぎる。
この無残な結果の家族も、
あの一言さえ間違えなければ、望みは叶っていたのだから。
それにしても、すごい迫力、すごい画力。
圧倒される真理の一冊!
胸に突き刺さる稀有な一冊!
日本での出版に感謝。
私も真理を核にした、物語を書き続けたい。
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「歌う悪霊」
2004年初版 小峰書房
ナセル・ケミル著
エムル・オルン絵
嶋田 完蔵 訳