izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

魔法を売る町3


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格調高い店の大きなショーウインドーには
(実は全面クリスタルなのでした。)

小さな金のプレートが一つ飾られています。
大変美しいカリグラフィで・・・


***Eraser***

・・・と、ありました。
イレイザーとは消しゴムのことでした。





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この物語は魔法使いと少女の物語です。

1~12章(各章20秒で読了可能)
はじまりはこちらよ→魔法を売る町1
(*゚ー゚*)



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   *


***Eraser***

・・・と、ありました。
イレイザーとは消しゴムのことでした。




そこへステッキを持った、スラリとした老紳士がやってきました。
紳士が玄関前に立ちますと、
黒塗りの扉はうっすらと希薄になりました。



扉が開くことはありませんでしたが、
紳士が一歩踏み出すと、玄関を通過しておりました。



客が中に入ると、扉は再び重厚感を取り戻し、
門番のように立ちふさがります。




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◆◆◆◆◆◆◆



老紳士が店内を見回しますと、驚くほど天井が高いのでした。
(外観よりも数倍ある空間でした!)


豪華にきらめくシャンデリアが数百の灯りをともしています。
よく見るとシャンデリアは、天井からぶる下がっているのではなく、
宙に浮いておりました。


ごくわずかに揺れ、そのたび灯りも揺れています。






紳士は壁に目を移しました。
艶々の黒塗り。
家具はすべてマホガニーのようでした。

この店には目がチカチカする魔法商品も、
色とりどりの広告もありません。



音楽すらないのです。
ごくたまに、洞窟の中をしたたるような、水滴の音が響きました。



床はオブシディアン(黒曜石)の巨大な一枚板でした。




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左手脇に視線を移すと、黒塗りのカウンターに
大きな(直径30センチほどの)水晶の珠(たま)が据えられており、



その奥には若い小柄な男が控えています。
黒いタキシードに、蝶ネクタイ。



これがこの店の主である魔法使いなのでした。
浅黒い肌に薄い唇。
彼の瞳は細く、冷静で、相手の本質を見抜くような目つきでした。



魔法使いの後ろでは、大きな灰色のフクロウが、
自分の羽に頭をうずめて寝ておりました。







「ようこそ、イレイザーへ」
魔法使いは控えめに言いました。



丸い片メガネをかけた老紳士は、カウンターに近づきました。
そしてかぶっていたシルクハットをわずかに持ち上げ、
店主の魔法使いにあいさつしました。



「ここは何の魔法を売る店なのかね?」



すると魔法使いは控えめではありますが、
力のこもった声で答えました。



「当店が扱っております魔法はただ一つ、
【真実の自分になる】
・・・という魔法です」



「真実の自分になる魔法?」
老紳士の頬にかすかに赤みがさしました。
そしてすぐに尋ねました。
「いくらだ!」



すると魔法使いは、紳士に耳打ちするようにして
小声で値段を告げました。


「なんだって!?」
老紳士は飛び上るようにして青ざめました。
聞いたことのない法外な値だったからです。



「それでその魔法でどう変わるのだ!?」



すると魔法使いは、わずかに微笑んで答えました。
「実は何も変わりません」



「なんだと?!」
紳士は顔を赤くして怒鳴りました。



「いえ、『本質的な意味においては変わらない・・・』 という意味ですが」

魔法使いは淡々と答えました。



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物語の深みに近づいて来ましたよ~~~。
第4話に続きま~す。
魔法を売る町4
(*^ー^)ノ