「それでお望みのものには会えましたか？」
魔法使いは、会話そのものに興味があるわけではありません。
娘の正体を探ろうとしていたのです。
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この物語は魔法使いと少女の物語です。
１～１２章(各章２０秒で読了可能)
はじまりはこちら→魔法を売る町１
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彼女は楽しげに答えます。
「ええ。大きな翼の天使に会えたわ。
街角で”プチ変身キャンディー”っていうのを無料配布していたの・・。
それに・・・”瞬間：ブロック解消：妖精” と、
”３分：コンサル：小鬼” にも出会ったわ。
でも・・・」
娘は少し苦笑しました。
「どれも私のイメージとは少し違っていたけど・・・」
◇◇◇◇◇
魔法使いは彼女のどんな隙も見逃すまいと、
黙ったままで娘の言動を見つめました。
彼女になんらかの秘密があれば、
水晶珠が現してくるはずでした。
けれどもそれは虹色のみを呈しています。
◇
「だけど・・・」
娘は優しい視線でフクロウを見つめました。
「このフクロウさんは、私が想像していたとおり・・・」
彼女はそっとフクロウの羽に触れました。
フクロウはなんの抵抗もせず、
娘を見つめ返しています。
彼女は優しくフクロウを撫でました。
◇
実はこの時、魔法使いは仰天したのでありました。
(もちろん表情は冷静そのものでありましたが)
なぜならこのフクロウは非常に扱いにくい性質でした。
命令に従わず、利口で、気高く、なつきませんでした。
けれどとても美しく、威厳のある姿だったため、
この店の【調度品の一つ】としては最適でした。
そこで魔法使いはフクロウに、
強力な魔法を何度も何度もかけたのです。
毎日与える水とエサにも、無味無臭の薬物を入れました。
その執拗な魔法と薬は、フクロウ深部に浸み込んでいきました。
それはある意味、痛みを伴わない拷問でした。
やがてフクロウの自我を抑え込み、
天からの贈り物である高貴さを奪いました。
魔法使いはフクロウの精神を征服し、支配し、蹂躙(じゅうりん)していたのです。
遠い空へ飛びたてる力があることを忘れさせ、
眼(まなこ)の光を曇らせ、
日々うつらうつらと過ごさせることに成功しておりました。
ただし、元来の猛々しさは残っていたので、
主人である魔法使い以外は近づけませんでした。
それなのに彼の目の前で、
ただの小娘・・・？が、
うれしげにフクロウを撫でているではありませんか！
”いったいこの娘、何者だ？！”
魔法使いの体内警報が告げています。
＃ピーコン・ピーコン・ピーコン・・・
＝彼にはジャズの雨音も、もう聞こえません＝
◆◆◆◆◆◆◆
虹色を呈す水晶と、
≪危険なフクロウを撫でる≫客をまじかで見ようと、
シャンデリアが娘の近くに降りて来ました。
すると高い壁に飾られていた
魔法使いの先祖の肖像画たちも、
娘が見たくなりました。
そこで天井ごとゆっくりと降りてきました。
つまり・・・天井が低くなってきたのです。
こうなると、店はもうテント並みのサイズでした。
◆◆◆◆◆◆◆
一方、魔法使いは娘に気を取られておりました。
そのため店全体の変化には気がつきません。
彼女はフクロウに優しい視線を投げかけて、
静かに撫でておりました。
◇
シャンデリアと、三人の肖像画たちは
水晶珠を覗き込み、
驚きの顔を見合わせました。
肖像画の一人が額縁に入ったまま、他の肖像画に尋ねました。
「こんな虹色、出たことあった？」
するともう一人が額縁の中から答えます。
「ワシの時？ ないない！」
さらにもう一人も額縁の中から答えます。
「ワシの時も、ないない！」
するとシャンデリアも、巨体を左右に揺らしました。
それは「オイラも、ないない！」という合図でしたが、
とうとう魔法使いに見つかりました。
現在の店主である彼は、カウンタ―の中で、杖をピシリ！と鳴らします。
すると一瞬で天井は元通りにされました。
ご先祖の肖像画たちも、しかたなく元の位置に戻りました。
◇◇◇◇◇
魔法使いはご先祖たちを睨みつけ、その後娘に意識を戻しました。
・・・その時でした。
彼女の美しい瞳から、大粒の涙がこぼれたのです。
魔法使いがあっけにとられている間に、
クリスタルのような涙は一つ・・・また一つと顎を伝わり、
オブシディアンの床にしたたって行きました。
(床に落ちる前に、クリスタルのジュエリーケースが大急ぎで走ってきて、
涙をすべてキャッチしました)
＋◇＋◇＋◇＋◇＋◇＋
魔法使いが動揺を隠して立っていますと、
娘は小さな声で言いました。
「私、どうしたのかしら・・・
なんだか涙がこぼれちゃって・・・」
娘の瞳から再び大きな雫がこぼれ落ちます。
(床ではジュエリーケースが右往左往してキャッチしました)
そして彼女はフクロウの額に自分の額をよせて、
つぶやくように言いました。
「・・・大丈夫よ。
私が愛してあげるから・・・」
そして再びキスをしました。
フクロウはじっと目を閉じ、感じています。
”この娘、何をしようとするつもりだ？！”
魔法使いは身構えました。
＃ピーコン・ピーコン・ピーコン・・・
◆◆◆◆◆◆◆
けれども娘が次にしたのは、ハンカチを取りだして
涙を拭いたことだけでした。
「ごめんなさい。
このフクロウさんを見つめていたら、
とても悲しくなっちゃったの。
どうしてかしらね・・・」
そう言って彼女は魔法使いに微笑みました。
◇
＃ピーコン・ピーコン・ピーコン・・・
魔法使いはあらゆる可能性を予測しました。
あまりの緊張に冷たい汗が流れます。
◇
しかし娘は穏やかなままで言いました。
「何も買わないのに、おじゃましてごめんなさい。
でも・・・おいとまする前に一つ教えて下さらない？」
「な・・・なんでございましょう」
魔法使いは杖を握りしめたまま答えました。
＃ピーコン・ピーコン・ピーコン・・・
「ショーウインドーに”Eraser”
って書いてあったわ。
”消しゴム”っていう意味でしょう？
それはどういう魔法なの？」
「そ・・・それはですね」
魔法使いは緊張し続けることに疲れていました。
けれども警戒を怠らず、慎重に言いました。
「当店の特徴は、
”本来のものでないもの”を消す魔法だからです」
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いよいよ物語は核心に近づきます・・・。
(￣ー￣；
データ消えたので再投稿しております。
ごめんなさい。。。
続きはこちら→魔法を売る町７
