ある夜、空が光った。
三人の兄弟が外に出ると、
三つの火の玉が落ちてきた。
それは森の向こうの湖の方角に落ちたようだった。
兄弟は光の方向へ走った。
彼らがそこに着くと、
湖の浅瀬で水蒸気を立て、
緑色の石が三つ落ちていた。
いまだ光と熱を放ち、
遠い宇宙からやってきた痕跡をとどめている。
見たこともない怪しい石。
ギザキザの外観、
”コズミック・グリーン”と言うにふさわしい、
神秘的で深淵な色だった。
*
長男が一番大きいものを拾った。
次男が二番目に大きいものを拾った。
三男は小さなカケラを拾った。
*
長男はその石を細かくバラバラにした。
そしてそれをクリスタルアクセサリーに仕立て、
外国の王族に高値で売った。
全部売り終わった後は、
イミテーションを販売し、
セレブ向きビジネスコーチになった。
次男は石をツルツルに磨き上げ、
それで占いを始めた。
たくさんの人がやってきてクリスタルを覗き込み、
その魅力に引き込まれ、
次男の言葉にひれ伏した。
彼は教祖となり、崇められた。
*
三男はその石をじっと見つめた。
ギザギザの深い緑色のその奥に、
宇宙からの光があった。
彼はそこに「石」以上の何かを感じた。
ある時石が言った。
私は真理を秘めている。
私の声はその価値を理解する者にしか聴こえない。
どうやらあなたはそれを聴き取ることができるようだ。
大きな富や、大きな名声を必要とする者、
自らを”奉られたい”と思っている者には、
私という真理を聴くことはできない。
私は地上に落ちてくる時、
自らを三つに分けた。
なぜなら大きな一つの塊では、
目のくらんだ者たちによって
全て破壊されてしまうことがわかっていたから。
あなたは最も小さなカケラを拾った。
私が携えている真理を
あなたは地上のために役立てることができるだろうか?
そして、地上の者たちで、
あなたの言葉が聴こえる者がいるだろうか?
金儲けの仕方を教える者たち、
占いを教える者たちではなく、
あなたの言葉を聴く耳を持つ者が、
この星にいるだろうか?
富にも名声にもならない、
ただただ、シンプルな、
”真理の尊さ”というものに、
価値を見出してくれる者がこの星にいるだろうか?
そして・・・
たとえ価値を見出す者がいてもいなくても、
あなたは私の言葉を届けようとするだろうか・・・?
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物語はここで終わりです。
なぜならこの問いに答えるのは、
読者ご自身になるからです。
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