あるところに彫刻家の男がおりました。
彼は街の伝説に登場する人魚の製作を依頼され、
その仕事にかかりきりでした。
彼が彫刻と向き合っていると、
人魚はまるで生きているようです。
人魚は彼に歌を歌い、その歌で仕事がすすみました。
その姿は可憐な美しさと悲しさを放つ像でした。
いよいよ完成まじかになった時、
彼の親戚がやって来ました。
親戚は言います。
「なかなかすばらしい人魚の像だ。
だけど、もう少し痩せてた方がいいがいいんじゃないかね」
男はそうかもしれないと思い、
体のボリュームをおとしました。
次に近所の老婆が来ました。
そしてこう忠告しました。
「ウロコがはっきりしすぎだね。
あまり目立たないほうがいいと思うよ。
それから顔つきはもっと普通がいいね」
男は忠告に従いました。
そのようにして、様々な人が
彼の人魚に口出ししました。
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そしてとうとう夏至の夜、
人魚は海辺の公園でお披露目となりました。
でも、そこに完成していた像は、
輝きどころかなんのへんてつもない、
まるで愚鈍な品物でした。
人々はがっかりし、口々に彼を非難しました。
彼は皆の忠告を参考にしたのだ、と反論しましたが、
誰もこの芸術家を認めません。
海べりに立つ人魚像は忘れ去られ、
以降、誰も見向きもしませんでした。
夏の夜風と波音だけが、
人魚を通り過ぎてゆくのでした。
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作品が降りてきても、
物質界の常識に合わせると、
降りて来ていたエネルギーは消えてしまうということですね。
( ̄ー ̄;
ナンマイダブ…ナンマイダブ…。
(; ̄ェ ̄)