izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

クレーマー・カレイマーの功績3(完結編)

この物語には第1話 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11607725416.html

第2話 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11608386503.html がございます。
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ある新月の午後、
カレイであるクレーマー・カレイマーは、こっそりと竜宮城の裏にある
秘密の園に向かっていました。

できるだけ誰にも見つからないように砂の中を這っていきます。
それでもウニに見つかりました。

photo:08



ウニはしかめ面してトゲをむき出し、言いました。
「シッシッ!縁起の悪いやつ。あっちへ行け!」
クレーマー・カレイマーはトラブルを作る、という行為の積み重ねによって、
海の誰からも毛嫌いされていたのです。


。。。

やがて秘密の園につくと、
クレーマー・カレイマーは砂の中から目を出して、
ある方向を見つめます。

サラリン サラリン。。。。。。。。

やがてたくさんのお供を従えた
なよやかで美しい女性が一人現れました。
そうです、
クレーマー・カレイマーは乙姫様(おとひめさま)を待っていたのでした。

photo:01



乙姫様の黒髪はゆるやかな潮の流れに漂い、
白い頬にはほんのりと赤みがさし、
控えめで優しいまなざしが、周囲の生き物たちに注がれます。
紅のつけられた上品な口元から、時々笑みがこぼれました。

プク。。プクプク。。。。。。

細い体にまとった鮮やかな色の衣装は、フワフワ、フワフワたなびきます。
お供の鯛10匹もなんとおしとやかなことでしょう。

クレーマー・カレイマーはますます砂地に隠れ、つぶやきました。
「俺にとって海の奴らはどいつもこいつも不完全で、失格だ。
でも・・・彼女だけは違う。彼女だけは完璧だ!」

カレイは砂の中からこっそりと目玉を出して、優美な姫を眺めました。
彼にとって彼女は憧れであり、永遠でした。

そのうち乙姫様は、隠れているカレイをめざとく見つけて言いました。
「あら、クレーマー・カレイマー。
そんな所でいじけているのね、どうしたの?
こっちへいらっしゃい」

姫は大きな海亀の背中に腰掛けました。
山吹色の帯がたなびきます。

カレイはうれしさと恥ずかしさで、顔が真っ赤になるはずでしたが、
あいにくぶさいくな土気色のままでした。

「さあ、ここにいらっしゃい」
姫様は白くて華奢な手を差し出し、
カレイにそこに乗るよう促しました。

photo:03



クレーマー・カレイマーは、はりさけんばかりの気持ちになりました。
そして・・・何も言うことができませんでしたが、
薄汚い色のほっぺたは
だんだんピンクに変わりました。

カレイが遠慮がちに姫の手に乗りますと、
乙姫様はとても優しく言いました。

「私はあなたの仕事を・・・知っていますよ」

クレーマー・カレイマーは悲しさと恥ずかしさでうつむいたままです。

乙姫様は続けました。
「あなたが悪魔の化身のようだと言われているのを、私も知っています」

カレイは相変わらず何も言えずにおりました。

しばしの沈黙が流れます。。。。。。。
タツノオトシゴがやっとこやっとこ通り過ぎて行きました。。。。。。。


photo:07



そして再び姫様が言いました。
「あなたの仕事は、誰かに認められなければ価値のないものなのですか?」

クレーマー・カレイマーはハッとしました。
そしてずいぶん考え、ごく控えめな声で答えます。
「そんなことはありません」

乙姫様は微笑んでゆっくりうなずき、続けました。

「この海の者たちをごらんなさい」
姫は海底から大きな海を見上げました。
そこにはたくさんの生き物たちが行きかいます。

photo:05



「今は皆、ああやって元気です。
でも多くの者が数年先には死んでいることでしょう」
不老不死の乙姫様は静かな声で言いました。

「この海を去って、魂の世界に帰った時、
悪魔のように見えたあなたが、
本当は天使的役割を果たしていたことに気づくでしょう。

その時こそ、あながた本当に評価されるのです。
それまで・・・待てますか?」
乙姫様が訊きました。

「・・・・・・ええ」
クレーマー・カレイマーは小さく答えました。
思ってもみなかったこの言葉にカレイは感激しておりました。
しかし何かがひっかかります。

すると乙姫様はするどく見抜いて言いました。
「あなたは奥さんのことを気にしていますね」

するとカレイはむきになって言いました。
「あんなクソババアのことなんか気にしちゃいませんよ!」

姫は驚いたように笑いました。
「あんなクソババアですって?
私はあなたたちがラブラブだった頃を、
昨日の事のように覚えていますよ」

クレーマー・カレイマーはぐうの音も出ませんでした。
すると乙姫様が思慮深いお顔で言いました。

「そうですね。よくわかりますよ、クレーマー・カレイマー。
確かにあなたはしつこくて、嫌味なクレーマーだと思われている。
そして誰からも愛されていない」

「でも・・・」
姫様は少しお考えになり、
優しくカレイの背をなでながら言いました。

クレーマー・カレイマー。
私があなたを愛しています。
私だけでは不足ですか?」

カレイに電流のような何かが走りました。

姫は続けて言いました。
「たった一人かもしれません。
でも、私はあなたの応援者です」

クレーマー・カレイマーは小さく震えてうなずきました。

「それなら・・・」姫が言いました。

「もっと元気をお出しなさい。
そして行って、皆をかき混ぜて、困らせてやるのです。
さあ!」

カレイは背筋が伸びました。
ただし、這いつくばった姿勢はどうにもなりませんでしたが。

そして喜び勇んで飛び出しました。
新しい誰かの、とてもめんどうなトラブルをつくるために。

photo:06



プク。。。プクプク。。。。。。。。
プク。。。プクプク。。。。。。。。

海の奥深く秘密の園での出来事でした。

ポコ。。。ポコポコ。。。。。
ポコ。。。ポコポコ。。。。。




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これにてクレーマー・カレイマーの物語は完結です。
第2話の段階で、すでに多くの方が好評してくださったことに
感謝。(*^ー^)ノ
「本」にしてくださいとのリクエストも頂きました。

インチキな絵まで好評でした。
深謝。( ̄▽+ ̄*)

そして、実在のモデルご本人に、深く御礼申し上げます。
ありがとうございました!
おそらく涙読して下さることでしょう。
(*゚ー゚*)