izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

《二つの顔を持つ王女》ウタマロ:ショートストーリー

 

 

 

 

 

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《白い磁気の魔法使い》の日によせて。

物語を創りました。

挿画もウタマロです。

 

皆様の魂にお届けします。

 

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☆.。.†:*・゜☆.。†.:*・゜

 

 

 

 

 

《二つの顔を持つ王女》

 

 

 

 

ある森を王子が一人、旅していました。

 

 

 

 

王子の旅の目的は、

自分にとって”永遠に魅了される姫”

を見つけることでした。

 

 

 

 

 

 

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野を越え、山を越え、町を過ぎ、

海を渡り・・・。

 

 

 

 

 

たくさんの姫に会いました。

 

 

 

 

 

けれど未だに”これぞ”と思える姫には

出会っておりませんでした。

 

 

 

 

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ある深い森の中で、

王子は見たこともない壮麗な城を見つけました。

 

 

 

 

 

天を目指す尖塔が、

するどく立った豪奢な城です。

 

 

 

 

「今度こそ私の妻にふさわしい姫がいるはずだ」

王子は思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王子が城の前に立ちますと、

門は音もなく開きました。

 

 

 

 

 

どういうわけか、

家来は一人も出てきません。

 

 

 

 

 

城の内部は豪華絢爛。

王子が進むと、扉は静かに次々開き、

魔法が案内しているかのようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて王子は、

謎めいた城のその奥で、

花の園を見つけました。

 

 

 

 

 

 

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ありとあらゆる花たちが、

季節を問わずに咲いています。

 

たくさんの蝶、たくさんの小鳥。

木陰には果物が実っています。

 

 

 

小さな池には睡蓮が、

蕾をもたげて揺れていました。

 

 

 

 

 

 

 

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「姫はここにいるはずだ!」

王子は胸をときめかせ、

くねった道を急ぎました。

 

 

 

 

 

 

奥へ進めば進むほど、

花は色濃く、香りも高く、

麗しく咲き乱れているのです。

 

 

 

 

王子の心も高鳴りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とうとう小さな東屋が

園の中に現れました。

石造りの瀟洒な場所です。

 

 

 

 

 

そしてそこには、

妖精の女王のような姿の姫が、

座って王子を待っていました。

 

 

 

 

 

 

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フワリとした優雅なドレス、

金色の巻き毛。

繊細なティアラをつけています。

 

なんと気品に満ちていることでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

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王子の全身はうち震え、

姫の前にひざまずきました。

 

 

 

 

 

姫は薄いグレーの瞳で

王子をじっと見つめます。

 

 

 

 

 

王子の心は射抜かれました。

「ああ、王女様。あなたこそ、私の妻です。

どうか、我が国の未来の王妃になってください」

 

 

 

 

「そうですか。それはありがとう」

王女はあっさり答えました。

 

 

 

 

 

王子は言葉もないほど感激し、

その場で涙をこぼしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜のことでした。

王子は贅を尽くした客室に通されました。

 

 

 

 

 

 

 

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絢爛豪華な天蓋ベットに横たわっても、

王子はなかなか寝つけません。

 

 

 

 

 

昼間の美しすぎる姫の姿が

王子のハートを高鳴らせたままだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ふと見ると、

部屋の隅に小さな扉がありました。

金縁のアーチ型が、

なんとも秘密な感じです。

 

 

 

 

 

 

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そっと開くと、

奥は薄暗い下り階段になっています。

 

 

 

 

 

王子は好奇心にかられ、

階段を降りてゆきました。

 

 

 

 

 

地下特有の古い空気が満ちています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しばかり行きますと、

薄暗いドーム状になっていました。

 

 

 

 

 

奇妙なことに、

壁は木の根で覆い尽くされているのです。

 

 

 

 

 

下はむき出しの地面でした。

上の豪奢な客間とは、

あまりにかけ離れている感じです。

 

 

 

 

 

 

王子はあっけにとられ、

しばしそこを見渡しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・と、

突如、黒いフード姿が立ち上がり、

王子は驚いて飛び退きました。

 

 

 

 

 

不気味な者は木の根のような杖をつき、

とても大きな姿です。

 

 

 

 

 

 

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瞳は閉じていて、陰鬱な暗い表情。

ゴツゴツとした肌は木肌にも似ています。

グロテスクで得体の知れない者でした。

 

 

 

 

 

まるで地の底から湧いて出た、

黒い魔法使いのようでもあります。

 

 

 

 

 

そして「カッ!」とまぶたが開くと、

奇怪な目玉があったのです!

視線は王子を捕らえました。

 

 

 

 

 

 

 

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王子は悲鳴を上げ、

無我夢中で降りてきた階段へ逃れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、真昼のことでした。

王子は再び花の園へ行きました。

 

 

 

 

 

花たちの美しさは昨日に勝り、

そのかぐわしさの中を進むうち、

ゆうべの出来事は夢だったんだ・・・と、

王子は理解したのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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そして再び王女の姿を見つけると、

その心は踊りました。

 

 

 

 

 

挨拶の後、

王子は微笑んで言いました。

 

 

 

 

 

「昨夜私は、おぞましい者に出くわしました。

でもしょせん夢でした。

世界はこんなにも美しい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

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それを聞いた王女の顔が曇りました。

 

 

 

 

 

王子はそれに気づかず続けました。

 

 

「私が見たのは地底の怪物。

あの醜さを表せる言葉は見つかりません」

 

 

 

 

 

「そうですか・・・」

王女はさみしげな瞳で言いました。

 

 

 

 

 

 

「あなたが出会ったのは、

私のもう一つの顔。

私の夜の顔なのです」

 

 

 

 

これはおかしな冗談でしょうか?

王子は理解できずにおりました。

 

 

 

 

 

「あなたが私を妻として娶る(めとる)には、

私の二つの顔、

両方を愛して頂かなければなりません。

 

 

その二つをもって、私なのです。

昼間の私だけを連れ帰ることはできません」

 

 

 

 

 

王子はわけがわかりません。

言葉を失ったままでした。

 

 

 

王女はかまわず続けます。

 

 

 

 

 

 

「昼と夜の私。

そのどちらが表で、

どちらが裏ということもありません。

夜の間の魔法によって、

この美しい園ができています。

 

 

 

おわかりですか?

あなたが見た、

醜くおぞましく得体の知れない私の部分が、

光の園を創っています。

 

 

 

 

昼間の私だけを娶ることはできません。

それは両方の私を失うことです」

 

 

 

 

 

王子はまだ飲み込めずにおりました。

 

 

 

 

 

 

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さらに王女は続けます。

 

 

 

 

「私自身も、この花の園も大きな城も、

さらにはこの清々しい空も、

全ては私自身が創造したもの。

 

 

闇に隠れた木の根の部分は

これらを創り出す地下部分でもあるのです」

 

 

 

 

=空の高みで、鳥が一声鳴きました=

 

 

 

 

「二つの顔を愛して欲しいと、

あなたに無理強いを私はしません。

 

 

 

ただ、私自身の成り立ちは、

その二つからできていると、

知って欲しいと思いました。

 

 

 

光の昼と、闇の夜・・・。

 

 

 

永遠に世界を魅惑する私の魔法は、

こうしてできているのです。

 

 

どうぞ、お引き取りくださいまし。

 

 

 

遠い国の王子様。

あなた様の心で受けとめられる姫様が、

いつか見つかることでしょう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

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***

 

 

 

 

 

その後どのようにして城を去ったか、

王子には覚えがありません。

 

 

 

 

 

 

気づくと森を歩いていました。

 

 

 

 

夏の夕日がさしていました。

 

 

 

 

 

 

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☆.。.†

 

 

 

        :*・゜☆.。

 

 

 

   †.:*・゜

 

 

 

 

 

 

 

 

copyright © izumi utamaro 2017・6・6

 

 

 

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《白い磁気の魔法使い》の日によせての物語。

お読みくださりありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

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