izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

魔法を売る町10





ブッー!ブッー!
ブッー!ブッー!


「龍:警報発令! 龍:警報発令!!」




*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*



この物語は魔法使いと少女の物語です。

1~12章(各章20秒で読了可能)
はじまりはこちら→魔法を売る町1
(*゚ー゚*)




*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*





町は突如、騒然となったのです。
魔法使いは恐怖に歪んだ表情で窓に駆けよりました。



そこはすでに、ありとあらゆる魔法使い、魔女、箒、杖、バケツ、チラシ・・・。
様々なものが右往左往して逃げ惑っておりました。





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「変身キャンデー」を無料配布していた天使は
ホウ酸団子を持った魔女でした。



トラウマ解消していた妖精も、消臭スプレーを持った魔女でした。
コンサル子鬼たちは魔法使いに姿をもどし、
電卓を放り出して逃げ出しました。



◆◆◆◆◆◆◆



店の中で娘はきょとんとしています。


シャンデリアと、三人のご先祖たちは
けたたましい警報を聞き、
驚きの顔を見合わせました。



肖像画の一人が額縁に入ったまま、他の肖像画に尋ねます。
「こんな警報、出たことあった?」



するともう一人が額縁の中から答えます。
「ワシの時? ないない!」



さらにもう一人も額縁の中から答えます。
「ワシの時も、ないない!」



するとシャンデリアも、巨体を左右に揺らしました。
それは「オイラも、ないない!」という意味でしたが、
わずかに震えたあと、シャンデリアは脱出を試みました。




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それを見たご先祖の一人が、
額縁を腰に着けたまま、シャンデリアの端っこにぶる下がりました。



するとそれを見た別のご先祖も額縁をつけたまま、
その足首をつかみました。



さらに最後のご先祖も額縁からのび上がり、
足首をつかんでいるご先祖の踵を掴みます。



けれども額縁にズボンが引っかかり、
ずり下がってしまいました。
古めかしい下着がのぞきます。
彼はどうにかズボンを押さえました。



それでもシャンデリアは必死で逃げようといたします。
「離せ離せ!」「引っ張るな!」「置いてかないで・・・!」



大騒ぎになりましたが、いつもなら厳しいここの店主が、
茫然自失状態でした。






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◆◆◆◆◆◆◆




徐々に町は竜巻の前触れのような暗さがやって来ました。
気味の悪い西日だけがさしています。




◆◆◆◆◆◆◆



ゴーゴーゴーゴー嵐のような風が来ます。

ヒューヒューヒューヒュー町があおられ泣いています。





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ガタッ!ーーーー!



”Eraser”の玄関も、とうとう風に負けました。
渦巻いた風が店内に入ります。




#ピーコン・パーコン・ピーコン・パーコン・・・



魔法使いの内部警報が最大ボリュームで鳴り響きます。


ブッー!ブッー!
ブッー!ブッー!

「龍:警報発令! 龍:警報発令!!」




もう町はめちゃくちゃでした。
パニックで魔法が使えない魔法族が逃げ惑っているのです。






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◆◆◆◆◆◆◆



ありとあらゆるゴミが旋回しながら飛んで行きます。
美しい町並みも崩れてゆきます。



高級な店の玄関は壊れたトタン板に。
クリスタルの道は泥水の汚い道に。


燦然と輝いていた看板は、壊れたエアコンの室内機に戻りました。



そしてその中で、わけがわからず立ちつくすのは、
外から来たお客たちでした。。



◆◆◆◆◆◆◆



風はゴーゴー!
町はヒューヒュー!

 


=その時でした=

「東南東に龍・出現ーーーー!!」

悲痛な叫びのアナウンスが流れました!





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娘は駆け出して空を見ます。
魔法使いも恐怖に歪んた顔のまま、その後に続きました。



遥か遠い東の空に、
”白い何か”が小さく見えます。




「わぁ!龍かしら?!」
娘は興奮で飛び跳ねました。




けれども町の住人は戦戦恐恐となりました。


「ギャー―――!」
「出たぞ――――!」
「逃げろ――――!」




悲鳴、怒号、絶叫・・・
そして恐怖と絶望があふれます。

愚かなことに、一本の箒に5人が乗ろうとしています。
飛べるはずがありません。






◇◇◇◇◇




”白い何か”は空を飛翔しグングン、グングン近づきました。


そうです、それは「あの時の」真珠色のうろこをもった・・・


美しい白い龍でした!



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爪は鋭く、ヒゲは朗々と長く、ウロコは艶々と白い光沢を発しています。



=そして次の瞬間でした=


『ポンッ!』
逃げ惑っていた魔女が羊の姿に変わりました。



それに続いて
『ポンッ!』・・・『ポンッ!』 『ポンッ!』
次々に魔法使いたちが羊の姿に変わって行きます。




娘は目を丸くして見ています。



『ポンッ!』・・・『ポンッ!』 『ポンッ!』
『ポンッ!』・・・『ポンッ!』 『ポンッ!』





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それはまるでポップコーンがはぜるような光景でした。
羊に変わった魔法使いたちは、同じ方向へ逃げていきます。




風はゴーゴー!
町はヒューヒュー!




龍の姿は巨大になって、真上近くにやって来ました。
もう空を覆うほどになっています。
それにしてもなんと優美な姿でしょう!!



娘は歓喜し両手を伸ばして迎えます。





『ポンッ!』・・・『ポンッ!』 『ポンッ!』
『ポンッ!』・・・『ポンッ!』 『ポンッ!』






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これは魔法の町全体にかけられていた
【緊急退避魔法】でした。


万一”龍”が現れた場合の対処として、
全員「羊」となって逃げるよう、強制魔法がかけられていたのです。




◆◆◆◆◆◆◆



*なぜ「羊」になるのかは
ウタマロ物語: 「魔法使いと小さな龍」にございます。
( ̄ー ̄)



◆◆◆◆◆◆◆




町全体はどんどん崩れてゆきます。
生ごみ、粗大ごみ、産業廃棄物・・・そういうものに戻ったのです。


吹きすさぶ風にのり、ゴミが町全体に散乱します。

外から来ている客たちは、なすすべもなく立っていました。




◆◆◆◆◆◆◆



「メーメー!ヒーヒー!」
「メーメー!ヒーヒー!」


羊になった魔法使いは、先を争い逃げまどいます。
”Eraser”のご先祖たちも、
額縁が腰にはまったままの、羊の姿で逃げていきます。




 ◆



「メーメー!ヒーヒー!」
「メーメー!ヒーヒー!」



小屋に突っ込み、ゴミに突っ込み、
頭を隠してお尻を突出し、
隠れたつもりでおりました。





◆◆◆◆◆◆◆



羊たちは魔法学校の裏庭にある【石造りの羊小屋】
一斉避難が決まっていました。


空は灰色と黒・・・旋回する輝く白い龍で覆われています。
かすかに西日がさしていました。







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町全体が崩壊し、ほとんどの魔法使いが逃げる中、
たった一人元の姿を保っている者がいました。

それは”Eraser”の店主でした。
彼の姿は憤怒に満ちた鬼でした。
ワナワナ・・・ワナワナ震えています。



猛然と娘の真正面に立ちはだかると、
魔法の杖を娘の胸に向けました。




「よくも・・・・
よくも魔法の町を壊したな!」



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そして杖を振り上げた瞬間でした・・・・!







*×・*・×・*・×・*・×・*・×


(  ゚ ▽ ゚ ;)
娘、ピーーーンチ!
続きはこちら→
魔法を売る町11