暑い砂漠の真昼のことです。
フンコロガシはサラサラ崩れる砂の斜面で、丸い糞を後ろ足で押し上げようと必死でした。
「フンフンフンフンッ!うりゃぁああああ!」
何度やっても糞玉は、転がり落ちてしまいます。
彼はイライラして言いました。
「クソッ!なんだっていうんだ。
前はずっと平らな砂漠だったのに!
むかつくぜ!砂漠の、太陽の、風の、バカヤロー!!」
フンコロガシの心は
様々なものに対する不満で爆発寸前でした。
するとハヤブサが聞きつけてきて言いました。
「なんだって?砂漠はどこも真っ平じゃないか」
「このどこが真っ平さ!巨大な砂山だ!」
フンコロガシは憤慨して怒鳴りました。
するとハヤブサは涼しい声で答えます。
「ようく頭を冷やしな。誰が見たって平らな砂漠だ。
お前腹ペコなんじゃないのか?」
「メシなんか食ったさ」と、フンコロガシ。
「違うさ、心のメシだよ」
ハヤブサはヒラリと飛びながら言いました。
「なんだって?」
フンコロガシは汗を拭きつつハヤブサを見上げます。
「いいから、夜寝ないで空を見上げな」
ハヤブサはクルリと回り、
どこか遠くへ飛び去りました。
その夜。フンコロガシはめずらしく夜空を見上げていました。
天の川がしらしら現れます。
「天の声、金色の鈴、銀色の乙女、紺色の雫・・・」
星たちが歌っています。
どこまでも果てしない星空はフンコロガシを包み、
詩は降り注ぎ、舞い降り、染みとおりました。
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翌朝目覚めたフンコロガシは驚きました。
なんと砂漠が平なのです。
「そういうことか」彼はつぶやきました。
「俺の心が斜めになって、砂漠も斜めだったのか。
心にメシをやらねえと、世界は辛いことだらけ」
フンコロガシは昨日の糞玉を押しながら、
楽々と家へと向かいました。
「フンフンフンフン♬」
陽気な鼻歌を歌いながら。
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あなたにとっての
「心のメシ」はなんですか?
(*゚ー゚*)