その歌うたいは、喉の病を患っておりました。
もう何カ月も歌をうたっておりません。
彼はさみしげな顔をして、
公園のベンチに腰かけておりました。
そこに一羽の小鳥が来ました。
鳥は彼の友達でした。
足に傷があるようで、鳥はヨチヨチ歩きます。
小鳥は彼の肩にとまって、彼の頬に触れました。
彼の瞳に、涙があふれてまいりました。
*
夕方になり、小鳥はどこかへ去りました。
彼が池を眺めていると、
知り合いのピアニストがやって来ました。
ピアニストの指はひどいしもやけで、
このところずっとピアノが弾けずにおりました。
歌うたいは、ポケットから小銭をとりだし、
彼らはそれを飲みながら、しばらくベンチにおりました。
どちらも話はしないのですが、
まだ寒い春先でしたが、
星が出て、夜になると歌うたいは去りました。
ピアニストが一人座っておりますと、
そこに詩人がやって来ました。
詩人は心を病んでいました。
もうずっと詩をつくれずにおりました。
ピアニストは小さく鼻歌を歌いました。
彼は鼻歌に慣れていません。
夜が更けて、星が交代してゆくと、
詩人は一人、星を見上げておりました。
すると知り合いの画家がやってきました。
画家は自信をなくしておりました。
もう何か月も絵に向えずにいたのです。
詩人はどうすることもできずに、
画家の頬にキスしました。
画家の心の中に、何か光がさしました。
*
やがて詩人が去った後、
星も去り、夜が明けてまいりました。
画家はお日様の光を浴びて、
ベンチに座っておりました。
朝風がかすかにとおり、
木々がめざめてまいります。
小鳥たちがやってきました。
その中に、足に傷のある、あの小鳥もおりました。
画家は小鳥をそっと見ました。
そして優しく言ったのです。
「愛しているよ。
私はもうじき描けるだろう。
そしたら一番最初のモデルに、
☆.。.†:*・゜☆.。†.:*・゜
初めましての方へ、
ピアニストの指はひどいしもやけで、
このところずっとピアノが弾けずにおりました。
歌うたいは、ポケットから小銭をとりだし、
缶コーヒーを買ってきました。
彼らはそれを飲みながら、しばらくベンチにおりました。
どちらも話はしないのですが、
ピアニストの冷たい指は、ほんのりやわらかくなりました。
静かに時間が流れます。
静かに時間が流れます。
まだ寒い春先でしたが、
星が出て、夜になると歌うたいは去りました。
ピアニストが一人座っておりますと、
そこに詩人がやって来ました。
詩人は心を病んでいました。
もうずっと詩をつくれずにおりました。
ピアニストは小さく鼻歌を歌いました。
彼は鼻歌に慣れていません。
とぎれとぎれの曲でした。
それでも詩人の心の中に、一筋の涙が流れました。
それでも詩人の心の中に、一筋の涙が流れました。
夜が更けて、星が交代してゆくと、
ピアニストは去りました。
詩人は一人、星を見上げておりました。
すると知り合いの画家がやってきました。
画家は自信をなくしておりました。
もう何か月も絵に向えずにいたのです。
詩人はどうすることもできずに、
画家の頬にキスしました。
画家の心の中に、何か光がさしました。
*
やがて詩人が去った後、
星も去り、夜が明けてまいりました。
画家はお日様の光を浴びて、
ベンチに座っておりました。
朝風がかすかにとおり、
木々がめざめてまいります。
小鳥たちがやってきました。
その中に、足に傷のある、あの小鳥もおりました。
画家は小鳥をそっと見ました。
そして優しく言ったのです。
「愛しているよ。
私はもうじき描けるだろう。
そしたら一番最初のモデルに、
☆.。.†:*・゜☆.。†.:*・゜
初めましての方へ、
泉ウタマロは作家・アーチストです。
よろしくお願い申し上げます。