izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

モグリンと、地面の一番奥4

この物語には1・2・3がございます。
1 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11746165963.html
2 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11746182085.html
3 http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11750319102.html

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その後もモグリンはいろんな地層を奥へ奥へと進んで行きます。

濁った地下水で溺れそうになり、
真っ黒い油の砂で、ネトネトになり、
熱を帯びている地層では、毛皮のほとんどが焼け焦げました。

それらを通過する度に、モグリンは自分自身を思い出していったのです。



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短気だった自分。
弱虫だった自分。
時々怠け者だった自分。
妬みっぽかった自分。
強情だった自分。
小賢しかった自分。
さみしがり屋だった自分・・・。


・・・そして、行かなくとも知っていた、地上世界への想いがこみあげます。


雪解けの季節の森の笑い声・・・。
夏の初めの上品な緑色のユリのつぼみ・・・。
秋、天に帰る落ち葉たちの、たおやかな歌・・・。
銀色、に輝く霜柱の強さ・・・。

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地上世界は瞬間、瞬間が歓びであり、輝きでした。
各々が美しく、魔法に満ちておりました。

けれど地下のモグリンだけは、よそ者でした。
彼はそこには入れません。

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モグリンは血だらけの指で、狂ったように地面を掘ります。
「ガリッ! ガリガリッ !メリッ! メリメリッ!」

歯はギリギリ鳴り、涙はグチャグチャになって流れました。

体はすっかりボロボロで、もうモグラにすら見えません。
飲まず食わずで痩せ衰えていきました。

彼にとって自分自身など、どうでもよくなっていたのです。
地面の一番奥に何があるかを知って、
早く、妻のいる天国に行くこと。

モグリンをかりたてているのは、ただそのことだけでした。

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そしてついに、モグリンは地面の一番奥に着きました。
そこにはぽっかりと巨大な「白」がありました。

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次回最終話。
(*゚ー゚*)
単調で、地味なキャラクター、そして長い物語。
難しいことをわかっていて書き始めたこのストーリー。
私にとって一つのチャレンジなのです。
( ̄ー ̄;