長いこと旅をしている若者がいました。
旅は危険に満ちており、
彼はいつも何かに脅かされてきました。
中でも若者が一番恐れていたのは、
フードをすっぽり被った暗い人物なのでした。
亡霊のようなその存在は
つかず離れず彼につきまとい、
まるで死神のように
若者の心を苦しめました。
彼はある時、
全速力でその存在から逃げようとしました。
けれども次の街の入り口で、
亡霊は彼を待っていました。
とうとう若者は戦う決意をしたのでした。
誰もいない森の中で、
彼はその存在につかみかかったのです。
フードが取れた時、驚いたことにその人物は
7年前死んだ姉そっくりの、
痩せて青白い女性でした。
彼女は悲しげに言いました。
「私はあなたの旅を邪魔しようとしているのではないのです。
醜悪な姿をしているからと言って、憎まないで下さい」
若者はハッとして腕を下しました。
彼女は震える声で続けました。
「私はあなたの長く危険な旅に注意を促そうとついてきました。
でも…旅そのものを邪魔するつもりはありません。
私にとって、あなたはとても大切なのです」
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その後の旅路もその存在は若者について来ました。
でももう彼は、やみくもに恐れなくてよいことを理解しました。
そして…
亡霊のような姿の、不安という存在と共に、長い人生を旅して行ったのでありました。