あるところに、モグラの国がありました。
皆働き者でしたが、
たった一人手におえない者がおりました。
それは王様のモグラでした。
「俺は虫の幼虫が食べたかった!」と皿を蹴とばし、
不作法をたしなめられると、
「作法だとか、しきたりってものは、俺が一番嫌いなやつだ!」
といきまくしまつ。
優しくされれば うるさがり、
放っておくと ふてくされる王様でした。
ある日 王様は皆を集めて言いました。
「何もかも気にいらねぇ!みんな首だ!」
家臣は残らず消えました。
誰もいなくなった王宮に、
しとしと雨音が響きます。
王様は泥から頭を突き出して、
天に向かって怒鳴りました。
「バカヤロウ!濡れるじゃねぇか、雨なんか降るな!」
雨はピタリとやみました。
翌朝、王宮はギラギラ暑くなってきました。
王様は土から頭を突き出して、
天に向かって怒鳴りました。
「バカヤロウ!暑いじゃねぇか、ギラギラするな!」
太陽はパッタリ消えて、
あたりは闇に閉ざされました。
雨も太陽もなくなったその世界には、
風も、木の葉も、春の歌もなくなりました。
ベトベトの闇が、地上と地下を支配します。
その後モグラの王様はどうなったかですって?
残念ながら王様は、まだそのままで そこにいます。
泥炭のような世界で、いろんな愚痴を吐きながら。