izumiutamaro’s blog

泉ウタマロの新しいブログです。よろしくお願い申し上げます。

クレーマー・カレイマーの功績1



その日の午後、
竜宮城にある竜王の御前に海の生き物たちが集まっていました。

皆、一様に興奮しています。

竜王様、あいつです。あいつがいつも火をつけやがって!」


サメが牙をむき、グルグル回りながら憤っています。

「そうだ、間違いなくあいつだ
平和な俺たちの暮らしをめちゃくちゃにしやがって!」
タコがウネウネ動きながら真っ赤になって怒っています。



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他の魚も、カニも、サンゴも、プクプク小さな泡ぶくでさえ、
一様に許せない形相で「その者」を見ています。



「ようし、よくわかった」


真ん中で思慮深げに聞いていた、竜王が言いました。


「お前は自分の罪を認めるのか?」
竜王が見下ろした先には、
一匹のひしゃげたカレイが、海藻のロープでグルグルに捕えられておりました。




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カレイは身動き一つできない状態でしたが、
それでもふてぶてしい目つきで周囲をにらんでおりました。



そして課せられるであろう刑を恐れてはいるものの、
そんなそぶりはみじんも見せず、口をへの字に曲げ、
傲慢な態度で返事もいたしませんでした。



「こいつはもう何年も俺たちのすべてに難癖つけて、
海の平和を乱しやがって。
こんな悪魔みたいな奴は死刑だ!」

クロマグロが猛然と言いました。


「そうだ、そうだ俺たちがどれだけ苦しんだか。
邪悪な奴を死刑だ!」他の者が一斉に賛成しました。


「死刑かね?」竜王は困ったように考えています。


「全員が死刑にしろと?」


「そうです、そうです。
こんな奴は目玉をくり抜いた上で極刑にすべきです」


うつぼが激しくいきまいて言います。


カレイは内心恐れながら、それでも無関心なそぶりでおりました。

「なるほど、それでは」竜王はあらたまって言いました。


「極刑は海の仲間の全員一致でしか行わないことになっておる。
全員死刑に賛成かね?」


「賛成だ!死刑しかない!」


すべての生き物が怒鳴り、潮はゴーゴー回転しました。


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「それでは仕方ない。罪深きクレイマー・カレイマーを・・・」


竜王が言いかけたその時、

「お待ちください!」小さく叫ぶ声がしました。


竜王が足元を見ますと、若いカサゴのカップルがそこにいました。カサゴ男子が言いました。


「確かに僕もあの人に翻弄されて、頭がクラクラになって、
そいで気持ちがズタズタになりました」

するとカサゴ女子も言いました。


「アタイもあの人に翻弄されてギタギタな時があったの」
海の仲間は覗き込むようにしてそのカップルを見ています。


「続きを述べなさい」竜王が促しました。


「はい。僕らボロボロな心で、目も虚ろで海の底を泳いでいた時、
ぶつかったんです」カサゴ男子が答えました。


「そうなんです。アタイたちその時出会ったの、
そして今幸せなんです」カサゴ女子も答えます。



「すると死刑には反対だと?」竜王が尋ねました。


「はい、僕らはクレイマー・カレイマーの死刑に反対です!」
カサゴは小さくとも果敢に言いました。


他の者たちの異論が巻き起こり、海全体がゴンゴン沸き立ちました。




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「救われたな」竜王が言いました。


やがてカレイのロープは解かれ、ふてぶてしい表情のまま、クレーマー・カレイマーは逃げて行きました。




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このお話は海の奥深く。


竜王の御前のできごとでした。




めでたし、めでたし。:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

*続編2はこちらです*