「私はあなたのことも知っています」
モクレンは続けました。
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この物語は2部でございます。
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「あなたはギャンブルにのめり込み、
それに負け、大酒を飲み、健康を害し、
破産し、家族と別れ、家を失って、
こうしてここに立っています。
あなたは自らの奥の、その奥にある輝きを忘れ、思い出せず、
自分は愚か者だと思ってそこに立っています」
モクレンの口調はきっぱりとしており、
あなたは自らの奥の、その奥にある輝きを忘れ、思い出せず、
自分は愚か者だと思ってそこに立っています」
モクレンの口調はきっぱりとしており、
そして淡々と続けました。
本当は何があるのか、を」
彼は茫然として、しばらくそこにおりました。
太陽はいつになく黄色い光を放ちます。
風はますます冷たく、そこには何の希望もないようでした。
男はゆっくりうなだれて、
何も言わずにモクレンに背を向け、
再び歩きはじめました。
彼は茫然として、しばらくそこにおりました。
太陽はいつになく黄色い光を放ちます。
風はますます冷たく、そこには何の希望もないようでした。
男はゆっくりうなだれて、
何も言わずにモクレンに背を向け、
再び歩きはじめました。
重い荷物が肩に食い込み、
痛む膝をかばいながら進みます。
けれども彼の心は、その時そこにいませんでした。
心は深くに降りたのです。
男は突然振り向きました。
そして膝をガクガクさせながら、急ぎ足で戻ってきました。
「俺が・・・救ってやる!」
モクレンは何も言いません。
彼は無骨な手で必死になって掘っていきます。
汚い上着が、なおのこと汚れました。
けれども彼は、膝と腰が痛むことや、
指から血が出てきたことを気にしません。
彼はもくもくと、その仕事に没頭しました。
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丸一日かけて、彼はモクレンを掘り上げました。
そしてゴミ置き場にあった、破れたビニールで、
モクレンの根をくるみました。
「ほらよ、俺がかついでやるさ」
彼は力のない腰でモクレンを背負いました。
それは予想以上に重たくのしかかりましたが、
彼は力を振り絞り、一歩一歩進みました。
ゆるい上り坂を進み、
途中何度も休憩しながら、
暗くなる直前に小さな寺に着きました。
男が門をたたくと、
一人の若い僧が丁重に彼を迎えました。
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完
完
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